2025年1月23日(木)8:50発表
日本 令和6年12月分貿易統計(速報)
【1】結果:2024年12月は6ヶ月ぶりに貿易黒字
2024年12月の貿易収支は、1,309億円の黒字となり、6ヶ月ぶりの貿易黒字となりました。輸出入ともに金額に振れはありながらも右肩上がりで上昇しているなか、コロナ禍と比較すると収支はおおむねバランスされてきている様子がうかがえます。12月の為替レート(税関長公示の平均値)は、1ドル152.48円で、前年同月比3.8%の円安となり、2024年を通して円安基調で推移したことも輸出入額の上昇に寄与しました。
暦年ベースでは2024年は5兆3,326億円の貿易赤字となりました。4年連続の赤字となるものの、赤字幅は前年比で44%と縮小傾向に向かいました。
【2】内容・注目点:自動車輸出の回復が待たれる
輸出動向に注目すると、2024年の後半から自動車等の輸送用機器の輸出が冴えず、全体を下押ししていたことがわかります。自動車は海外での現地生産・出荷の体制を築いているため、貿易動向のみで販売全般の低下は確認できませんが、需要の弱かった中国など一部の輸出が影響したと考えられます。足元12月では、半導体が輸出をけん引しました。半導体等製造装置が0.4ポイント、半導体等電子部品が0.3ポイントと全体を押し上げ、計0.7ポイントプラスに寄与しています。
一方で上述の商品の基調をみると、また違った内容が見えてきます。自動車はマイナス推移が続いているものの下げ止まっている様子がうかがえます。直近の生産予測では、この冬にかけて生産を増やす見通しがされていることから、先行きでは回復していくことが期待されます。
半導体はまちまちで、製造装置は12月も前年同月比10%強の増加であるもののピークアウト、電子部品は底打ちの様子であることがわかります。半導体セクターはAIの文脈(主に半導体メモリー)においては需要の強さがうかがえるものの、そのほかの用途においては強さがうかがえる様子もないため、動向の注視が必要でしょう。
【3】所感:原油の輸入価格は下落寄与であるものの、消費マインドの改善には時間がかかるか
原油等を含む、鉱物性燃料の前年同月比は4ヶ月連続マイナスで推移しており、同商品の輸入は下落寄与となっています。一方で国内の物価に目を向けると、ガソリン代補助金の縮小(2025年1月実施)によって小売・店頭価格は上昇しており、生活実感とは距離があると感じられます。ガソリン等の支出は家計支出の占める割合も大きく、せっかく賃上げが達成されていたとしてもそれに相殺されるようであれば、消費マインドの改善にはまだまだ時間がかかるでしょう。補助金の縮小は漸次的に、負担感を感じさせない速度で、また輸入価格の低下とバランスのとれた価格推移を期待したいところです。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太