バス乗客乗員13名死亡、原因は運転手と乗客のトラブル?

10月に、中部の重慶市で長江(揚子江)を渡る橋から路線バスが転落し、乗客乗員13名が死亡し2名が行方不明となる大事故がありました。

バス車内の映像や、対向車から撮影された転落の様子が日本でも大きく報じられましたので、ご覧になられた方も多かったのではないかと思います。車内の映像を見ますと、運転手のハンドル操作が疑問に思えてならないのですが、橋の上であったことで、重大な結果を招くこととなりました。

車内の映像からは、運転手と女性の乗客との間にトラブルがあったものと思われます。報道では、乗客が予定していたバス停で降りることができず(降りるのを忘れた?)、その後運転手にバスを停車させるよう求め、運転手がこれを拒んだことで、言い争いから殴り合いになったとされています。

重慶での事故は、重大な結果を招いたことから、特に大きく報じられることとなりましたが、中国ではバスの運転手と乗客とのトラブルが増加しており、問題になっているそうです。

犯罪あるいは訴訟事件を専門に扱う研究所によると、2016年の1月から10月の間に、バスの運転手と乗客の間で発生したトラブルにより、刑事事件となったものは223件でした。昨年2017年はさらに5%増加しているそうです。

専門家はトラブル回避策を提案しているが…

被告人の7割近くが乗客で、トラブルの原因は以下のように分類されています。

 

1位 降車時(乗客が降車を忘れた、運転手が停車を忘れた等)
2位 運賃
3位 酒や薬物の服用
4位 窃盗等の犯罪行為
同 乗車時(運転手が扉を早く閉めすぎた等)

 

事件のうち3割ほどで、バスの走行中に乗客がハンドルを操作する等、運転の妨害を行っており、また4割ほどで死傷者が発生しています。

専門家は、被告の約8割が傷害、危険行為等により有罪となるものの多くに執行猶予が付されているとし、バスの運転手に危害を加えることは、特に走行中には重大な結果につながるとして厳罰化を求めています。特に執行猶予付の有罪判決は、再犯の抑止力としての効果が乏しいと指摘しています。

北京市の人民法院の裁判官は、中国の刑法では危険行為を犯した者に対し、3年以上の禁固とすることを定めているが、実際には行為の内容や結果に応じてより軽微な刑とする等、分別を持って判断を行っていると述べています。

一方、上述の専門家は、行為そのものが危険である場合には、仮に結果が軽微なものであったとしても、厳罰に処すべきとしています。乗客と運転手の双方に、トラブルを招く原因があるものと考えられ、厳罰化で件数が減るほど単純なものではないように思われます。

多くの専門家は、まず重大事故につながることを回避するよう対策を取るべきとしています。一例として、運転席を扉やカバーで覆うことや、非常ボタンの設置を行う等、ハード面での改善を提案しています。

根底には、人々の「民度」の問題があるものと考えられ、問題の解決は容易でないように思われます。運行者側の努力やマスコミ等による教育啓蒙等により、徐々に改善が図られるよう、願いたいと思います。

北京の路線バスでは、ワンマン運転のものは少なく、多くで車掌あるいは整理員が乗務しているため、運転手と乗客との間のトラブルは少ないように思います。それでも、何が原因なのかは分からないのですが、乗客同士の言い争いは時々目にします。都市での生活がストレスをもたらすものかもしれませんが、喧嘩や暴力沙汰は勘弁願いたいものです。

いかにも中国的な、あるいは現在の中国ならではの話題のように思えました。