米国株はビッグ5という5銘柄の成績である

極端なことを言えば、米国株はビッグ5という5銘柄の成績である。米国株の方向を決めるのは、ビッグ5(アップル・アマゾン・アルファベット(グーグル)・フェイスブック・マイクロソフト)の5銘柄の動き次第だろう。

米S&P社が提供するダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表するアメリカの代表的な株価指数であるS&P500は、2013年中旬以降、年率わずか6.1%に過ぎない。一方、ビッグ5指数は同期間に57.3%とべらぼうに高い評価をされている。

【図表1】 S&P495とビッグ5(アップル・アマゾン・アルファベット(グーグル)・フェイスブック・マイクロソフト)
出所:http:www.williamsmarketanalytics.com
マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート The Gloom, Boom & Doom Report・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載

欧州の個人情報に対する規制、英国のデジタル課税などの動きから、FAANG(フェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグル(アルファベット))、GAFA(グーグル(アルファベット)・アップル・フェイスブック・アマゾン)、ビッグ5(アップル・アマゾン・アルファベット(グーグル)・フェイスブック・マイクロソフト)と呼ばれるIT企業の成長神話に陰りが出てきている。

今後、貿易戦争が拡大すると、多国籍IT企業の法人税問題にまで発展する可能性がある。株の運用者はそれをとても心配している。また、トランプ米大統領はアマゾンに対する課税強化や反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反での提訴を検討していると噂されている。したがって、今後はハイテク株も「未来を買う」といった動きから、<業績相場>に移行すると考えている。

石原順の注目銘柄

アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN):<押し目買い>を狙いたい

アマゾンは10月から急落に見舞われたが、それでも年初からのリターンは11月12日現在46%もある。

【図表2】 アマゾン(週足) 順張り=標準偏差ボラティリティトレードモデル
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート

昨年のマネックス証券の米国株セミナーでも、「アマゾンは反トラスト法的な分割のリスクはあるが、<最強銘柄>だ」と申し上げてきた。

アマゾンのビジネスモデルは、ウォーレン・バフェットの<調達コストゼロ>のビジネスモデルと共通する部分も多く、あのハイテク株嫌いのウォーレン・バフェットでさえ、「われわれの時代が生んだ最高の経営者である」と、アマゾンCEOのジェフ・ベゾスを絶賛している。

アマゾン株の日足を見てみよう。現在、相場の方向性の強さを表すADXと標準偏差ボラティリティがピークアウトし、10月からの売りトレンド相場はいったん終息した格好となっている。

【図表3】アマゾン(日足) 順張り=標準偏差ボラティリティトレードモデル
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート

ADXと標準偏差ボラティリティが低下中のトレンドレスなアマゾン株の現在の環境では、<押し目買い>を狙いたい。

【図表4】アマゾン(日足) 逆張り=ATRチャネルトレードモデル
上段:ATRチャネル・逆張りシグナル
下段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
出所:パンローリングカスタムチャート

逆張り取引で成功するには、

1.トレンドが発生しにくいコンディションの銘柄を取引する

2.標準偏差ボラティリティやADXというテクニカル指標を使い、方法性のあるトレンド相場と方向性のないランダム相場を認識する

3.システマティックな損切り注文を置いておく

という3点が重要である。

米国株がバブル的な動きから<業績相場>へと移行するなか、株式運用者の注目を集めているのはキャッシュフォローの良い株と生活必需品銘柄である。

以下のホームデポ、P&G、ジョンソンエンドジョンソンは、不景気にも強いエクセレントカンパニーである。クリスマスシーズンの前にこれらの銘柄は上昇するパターンが多く、特にこの時期は3銘柄とも<買い>の銘柄と言えるだろう。

ホームデポ(ティッカーシンボル:HD):<買い>

【図表5】ホームデポ(日足) 順張り=標準偏差ボラティリティトレードモデル
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート
【図表6】ホームデポ(日足) 逆張り=ATRチャネルトレードモデル
上段:ATRチャネル・逆張りシグナル
下段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
出所:パンローリングカスタムチャート

P&G(ティッカーシンボル:PG):<買い>

【図表7】P&G(日足) 順張り=標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート

ジョンソンエンドジョンソン(ティッカーシンボル:JNJ):<買い>

【図表8】ジョンソンエンドジョンソン(日足) 順張り=標準偏差ボラティリティトレードモデル
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート

GE(ティッカーシンボル:GE):<戻り売り>

ウォーレン・バフェットが売り抜けて、大きく売られているのがGEである。この銘柄は<戻り売り>だろう。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる保険・投資会社バークシャー・ハサウェイは株式を売るタイミングが絶妙だ。ブルームバーグのデータによれば、同社が2016年以降売った12銘柄の公開企業株のうち9銘柄が、バークシャーが売却を終えた四半期の末時点から今までに、S&P500種株価指数のパフォーマンスを下回った。パフォーマンスの差が顕著なのはゼネラル・エレクトリックで、バークシャーが売却した2016年4~6月(第2四半期)以降の差は年率で約64ポイントとなっている

出所:2018年11月6日 ブルームバーグ「バフェット氏のバークシャーが売ったら売り時」

【図表9】GE(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ 中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26) 下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ 出所:パンローリングカスタムチャート

ウォーレン・バフェットの運用については、次回のレポートで取り上げたい。

この世に絶対に儲かる売買手法など存在しない。だが、ゲームの勝者になるためには、エッジ(優位性)というものを見つける必要がある。そして、一番大事なのは、資産管理(マネーマネージメント)だ。運用は確率に賭けるゲームとして始まり、資産管理の失敗によって終了する。

マネーマネジメントとは、トレードにおいて最も重要なルールである。トレンドや価格ももちろん重要だが、自分の資金をどう扱うべきかを分かっているかどうかは最も大切なことである。
(ラリー・ウィリアムズ)

日々の相場動向については、ブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。