インドのモディ首相は、先週末に日印首脳会談のため日本を訪問した。10月28日には山梨県の安倍首相の別荘を訪れた。安倍首相とモディ首相の個人的な関係は深いとされ、モディ首相の日本への協力期待も大きいと推測される。

安倍首相にとっては、インドは「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要なパートナーという訳で、両国は安全保障面での連携や経済協力関係を強化させたいということだろう。モディ氏は出国に先立って、インドのPTI通信に「日本とは理想的な連携が実現しており、経済や技術面で最も信頼できるパートナーだ」と語った。

一方で、モディ首相はインド国内では来年春に選挙を控え苦戦が伝えられている。経済も、7%を超える成長率を維持する見込みだが、インフレが悩みの種という状況である。

モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)は、お膝元の西部グジャラート州議会選では農村部で苦戦を強いられたり、カルナタカ州議会選では第一党の座を確保しながらも過半数は確保できなかったりしていた。これによって、BJP内部でも総選挙を意識した農業・農村重視の傾向を強める可能性が高まっている。モディ首相も、「2022年までの5年間で農家の所得を2倍に増やす」との政策目標を公表して、巻き返しに躍起である。

こうした情勢を前に、ばらまき型の政策が目立ってきている。中央・州政府による農民の債務に対する減免措置が来春の総選挙までに実施される予定で、その規模はGDP比1.5%の400億ドルに上るという予測も出ている。

所得再分配には一定の効果はあるにしても、財政赤字を拡大させるほか、金融面でもモラルハザードを生みかねないリスクを孕んでいる。この政策によって、モディ政権の改革路線との整合性は問われるところである。またこうした政策は、財政赤字の拡大に直結し、インドからの資金流失につながりかねないリスクを市場は懸念している。

モディ政権は昨年度も財政赤字目標を当初のGDP比3.3%から3.5%に修正したという経緯もあり、選挙対策により多額の費用を費やすのではないかとの観測はくすぶっている。

モディ政権には、ひと頃の安定感がないだけに、来年の総選挙を控えて政局の流動化観測も、気掛かりなところだろう。安倍政権にどれだけの見通しがあるのか、今回のモディ首相の厚遇を見て感じるところである。