「不安定な動きも今週で収束するだろう」と述べた先週の展望は、まったく外れた。米国株のバリュエーション調整という要因しか見ていなかったからだ。相場はすでにファンダメンタルズ以外の要素で動くフェーズに入っている。

今回の急落は、米国の長期金利上昇に対する米国株式の割高感調整を第一フェーズとすれば、現在は第二フェーズにある。第一フェーズは金利見合いのバリュエーション調整というファンダメンタルズ的な要因がはっきりしていたが、第二フェーズの現在は「株価が急落した」という事実そのものが引き起こす①不安心理と②リスクパリティやロスカットなどのポジション調整、③急激な下方トレンドに追随するCTAの売り、が主因である。市場心理や需給といった要素で動いている。よって水準よりも日柄が調整完了の目処となる。

2月の急落も同じパターンだった。急落直後、テクニカル的な面などからいったんは下げ止まるが、最終的に底が入ったのは3月下旬。1ヶ月半以上の日柄を要した。2015年のチャイナショックの時も同様に最初の急落から1番底まで1ヶ月半かかっている。これらに倣えば、最終的な底入れは米国の中間選挙後、11月の下旬か。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が11月30日からブエノスアイレスで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて会談する予定だが、調整が長引けばそこまでかかるかもしれない。

目先は下げ止まっておかしくない。日経平均の25日移動平均乖離率は8%超、RSIは27、東証1部の騰落レシオ(25日)は70台前半と2月の急落時にいったん下げ止まった水準にほぼ並んでいる。

TOPIXに至っては3月の安値を下回り、昨年9月上旬の水準にまで引き戻された。この1年間の企業価値評価額の増分を吹き飛ばしたことになる。日本企業がこの1年間、企業価値を毀損してきたなら話はわかるが、そんなことはなく、むしろ逆である。ROEは10%台、売上高利益率は5%台、損益分岐点比率は格段に下がった。事業の集中と選択を進めて2年連続の最高益を更新した。

日経新聞はソニーの業績観測記事を掲載した。18年4~9月期決算の発表は30日の予定で、同時に19年3月期通期の業績予想を上方修正する公算が大きいとしている。従来の見通しは営業利益で前期比9%減の6700億円。過去最高だった前期(7348億円)の更新が視野に入ってくる可能性もあると報じた。

30日は決算発表前半戦のピーク。業績上方修正の可能性があるのはソニーだけではない。堅調な企業業績も株価の下げ止まりに寄与するだろう。

今回の世界同時株安の震源地は米国だ。米国の揺れが収まらない限り、東京市場も安定しない。米国のイベントを受けた相場変動に引き続き警戒したい。11月1日には10月ISM製造業景況指数、2日に10月雇用統計の発表がある。それら重要経済指標にまして注目されるのが11月1日発表のアップルの決算だ。アマゾン・ドット・コムやアルファベットの決算は売上高が市場予想を下回り大きな下げとなったが、その悪い流れを断ち切ることができるか。正念場である。

予想レンジは20700~21800円とするが、先週のストラテジーレポートで書いたとおり、理屈を超えた相場に下値目処もなにもない。それでも、このマーケット展望を参考にしてほしい。ブルームバーグを起動したら「今日の言葉」にこうあった。

展望なくして希望はありえない。
ジョージ・ワシントン・カーヴァー (植物学者)

今週はハロウィーン・ウィーク。過去の統計ではハロウィーンの頃に買って春まで保有するのが、半年の投資成果でもっともよいとされる。それは「ハロウィーン効果」として知られるアノマリーだ。悲観一色の時というのは、往々にして絶好の投資機会でもある。