モトリーフール米国本社 – 2026年5月31日 投稿記事より

AI関連支出は、半導体を活用するサーバーやソフトウエアへと広がる

コンピューターおよびサーバーメーカーのデル・テクノロジーズは2026年5月29日に2027年度第1四半期(5月1日終了)決算を発表しました。これを受けて同社の株価は約33%急騰し、1日の上昇率として過去最高を記録しました。この株価上昇はデルの株主を喜ばせただけではなく、サーバーメーカーから企業向けソフトウエア企業まで、AIインフラ関連の幅広い銘柄を一斉に押し上げました。

過去1年以上にわたり、AIに投資する最良の方法は、半導体メーカーの株を保有することでした。しかし、2026年5月29日の動きは、AI半導体に流れ込む資金が最終的に行き着く先、すなわち半導体を搭載するサーバーや計算能力を実用化するソフトウエアにも資金が向かうことを改めて示しました。

今回は、こうした広がりから恩恵を受ける3銘柄を見ていきます。

デル・テクノロジーズ[DELL]

デル・テクノロジーズ[DELL](以下、デル)の第1四半期売上高は438億ドル、前年同期比88%増と過去最高を記録しました。増収率は2018年の再上場以降で最も高くなり、前四半期の39%から大きく加速しました。主因はAI向けに最適化されたサーバー事業で、その売上高は前年同期比757%増の161億ドルに急拡大しました。

しかし、好調だったのはAI関連機器だけではありません。データセンター向けハードウェアを手がけるデルのインフラストラクチャー・ソリューション部門の売上高は前年同期比181%増の290億ドルとなり、従来型の非AIサーバーやネットワーク機器事業でさえ92%成長しました。非米国会計基準(non-GAAP、調整後)の1株当たり利益(EPS)は214%増となりました。

さらに、経営陣は通期売上高見通しを1,650億~1,690億ドルへと上方修正し、AIサーバーの売上目標も600億ドルに引き上げました。

デルの副会長兼最高執行責任者(COO)であるジェフ・クラーク氏は第1四半期決算説明会で、「当社のパイプラインを見る限り、需要は減速ではなく、むしろ加速している」と述べました。

本稿執筆時点でデルの株価は421ドル前後と2026年初来234%上昇し、同社が発表した通期予想EPSに基づく株価収益率(PER)は約24倍です。これは成長ペースに見合う妥当な水準と思われます。

ヒューレット・パッカード・エンタープライズ[HPE]

デルの企業向けサーバー分野での最大のライバルであるヒューレット・パッカード・エンタープライズ[HPE](以下、HPE)は、2026年6月1日に自社の2026年度第2四半期決算発表を控え、同日には特段の発表がなかったにもかかわらず、デルに連れ高する形で約13%上昇し、過去最高値を更新しました。

デルの好決算をHPEにも当てはめる見方には一定の妥当性があります。第1四半期(1月31日発表)にHPEの売上高は前年同期比18%増の93億ドルとなり、ネットワーク機器メーカーのジュニパー・ネットワークス買収で強化されたネットワーク事業部門は151.5%拡大しました。この部門だけでHPEの全社利益の半分以上を稼ぎ出しています。HPEは第2四半期の売上高を96億~100億ドルと予想していました。

本稿執筆時点の株価は43ドル前後で、通期調整後予想PERは約18倍です。PERがデルよりも低いのは、AI向けサーバーの事業規模がデルよりも小さい点を反映しているためと思われます。

サービスナウ[NOW]

デルやHPEがAI投資のハードウェアへの広がりを示しているとすれば、サービスナウは同じ流れがソフトウエアにも及んでいることを示しています。

業務フローの自動化を手がける同社の株価は、売り込まれていたソフトウエア銘柄が買い戻される中で、5月29日に約14%上昇しました。「AIによって企業向けソフトウエアの需要を損なうのではないか」という懸念から、サービスナウの株価は2026年、大きく下落していました。5月29日に124ドル前後まで反発したとはいえ、株価は本稿執筆時点で52週高値より約40%低い水準にあり、時価総額も2,330億ドル前後から現在の約1,280億ドルに縮小しています。

しかし、同社の決算はAIによって既存事業が脅かされる懸念とは異なる状況を示しています。2026年度第1四半期のサブスクリプション売上高は前年同期比22%増の37億ドルとなり、AI製品をまとめて提供する「ナウ・アシスト」の年間契約価値(ACV)は2026年、15億ドルに達する見通しであり、目標の10億ドルを上回っています。ACVが100万ドル超の「ナウ・アシスト」の顧客数は前年同期比130%を超える増加となっており、AIがサービスナウの既存事業を侵食するどころか、むしろ拡大を後押ししていることを示しています。

一方、バリュエーションが懸念材料です。2026年の売り相場で株価が下がったとはいえ、先週末(5月22日)の上昇を含め、本稿執筆時点でサービスナウの株価は依然として調整後PERが30倍台半ばという高い水準にあります。

ハイパースケーラーによるAI投資、その恩恵は周辺分野へ

全体を見れば、巨大クラウド事業者(ハイパースケーラー)による巨額投資が他の企業にもたらす波及効果が次第に明らかになっています。2027年には主要クラウド事業者のAIインフラ投資額は7,000億ドルを超える見通しです。もちろん、その資金はまず半導体に向かうでしょう。

しかし、そこで終わりではなく、一部はデルやHPEが組み立てるサーバー、そして膨大な計算能力を実際の業務に変えるソフトウエアにも流れ込んでいます。5月29日の株式市場は、まさにこうした資金の流れをリアルタイムで織り込み始めたと言えるでしょう。

しかし、5月29日の株価上昇をそのまま追うことにはリスクもあります。ハードウェア銘柄が割安に見えるのには理由があります。利益率が低く、現在の設備投資サイクルに業績が大きく左右されやすい循環的なビジネスだからです。一方、サービスナウのようなより高収益の質の高いソフトウエア事業には、依然として高いバリュエーションプレミアムが付いています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Daniel Sparks(Sparks Capital Managementのオーナー兼最高投資責任者)およびその顧客は、記載されたどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、ヒューレット・パッカード・エンタープライズおよびサービスナウの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、情報開示方針を定めています。