・ECBは10/26の理事会で、債券購入の月額を600億ユーロから300億ユーロに減額することを決定。一方、インフレ率低迷等から、緩和継続を強調、預金金利はマイナス0.4%に据え置き。

・国債購入額縮小は9月の理事会で示唆していたため規定路線。12月の首脳会議で議論されるユーロ強化のための改革案実行には障害も多く、当面ユーロ強気材料は乏しい。

・日本の金融政策の方向性が乖離したのは90年代半ばの日本の金融危機以来。当面は、日銀の動きが注目される。来週の政策決定会合で、量的緩和継続へのニュアンスや、前回会合で、緩和策が十分ではないと反対票を投じた審議委員が何らかの対案を提示するのかが注目。

ECBの金融政策維持決定

26日の理事会では、中銀預金金利をマイナス0.4%に据え置く一方、債券購入の月額を600億→300億ユーロへの縮小を決めた。購入額縮小は、前回9月の理事会で示唆されていたが、緩和の期限を今年12月から来年9月に延期したことなどから、金利は総じて下落した(図表1)。 これに伴い為替も、ややユーロ安に動いた。9月の理事会後、ドラギECB総裁のユーロ高けん制にも関わらず一旦ユーロ高が進んだが、10月に入ってからは、債券購入額縮小を徐々に織り込み、発表後は1円強ユーロ安となった(図表2)。

欧州経済:不良債権は落ち着くが景気に勢い欠く。政治的混乱もくすぶる

ユーロ圏の問題は、他の先進国同様、インフレ率にも賃金上昇率にも勢いがないことである(図表4、5)。

但し、他の先進国に比べると、消費者信頼感指数が10年ぶりの水準まで回復してきているなど、回復の傾向が顕著である (図表6)。信頼感指数は、個人の消費動向の先行指数になることから、今後さらに、消費が拡大し、ひいては物価上昇に弾みがつく可能性が高い。

また、金融システムの脆弱性についても、景気の回復でようやく何とか持ち直してきた (図表7)。 金融・経済的な懸念要因は急速に後退してきている。

一方、スペインのカタルーニャ州独立問題は、州と中央政府の対立が深刻化しており予断を許さない。既に、カイシャ銀行、サバデル銀行等の主要行がカタルーニャ州からの本社移転を決定している他、他の業界の企業も移転を進めつつあり、景気後退による、金融システムの弱体化が懸念される。

他の地域でも、依然EUから距離を置こうとする保護主義的な動きは収まっておらず、来年春までにイタリアの総選挙も実施される予定である。足元では極右の動きも落ち着いているものの、依然不透明感はくすぶる。

ユーロ圏は材料難。当面、日銀の金融政策への注目度が上昇

今後のユーロ圏に関する材料としては、12月のユーロ首脳会合での、ユーロ強化のための改革案の議論があるが、スペイン・カタルーニャ問題を始め、各国で内政問題を抱える中で、改革は難航しそうである。このため、当面、更なるユーロ強気材料は出にくいだろう。

来週は日本の金融政策決定会合(10/31)と米国のFOMC(11/1)とが控える。米国は既に国債買入額の縮小開始を発表している。一方、次回の追加利上げは12月との見方が大勢を占める。

むしろ、注目は日本の金融政策動向である。過去40年間余り、日本の金融政策の方向性(緩和か引き締めか)は、時差はあっても概ね米国や欧州と連動していた。長期間にわたり異なる方向に向かい続けたのは90年代半ばの日本の金融危機の時期のみである(図表7)。今回のECBの決定で、20年ぶりに金融政策の方向性が日本の"一人旅"となる可能性が高まった。

来週の政策決定会合では、全ての政策が維持される可能性が高いが、日銀が、将来的に、他国の引き締めに追随するのか、あるいは、緩和方向に再度舵を切るのかといった、方向性のニュアンスが注目される。

とりわけ、同日に提示される展望リポートで、どの程度のインフレ予想値が示されるのか、予想は引き下げられる可能性が高いが、その場合、対応策が示されるのかが焦点。前回会合で、「2%の物価目標達成には緩和策が十分でない」と反対票を投じた片岡審議委員が、その根拠となる分析や、これに対する何らかの追加緩和案を提示するのかも注目に値する。仮に、物価予想の低下幅が大きく、現実的な緩和策の対案が示されれば緩和の可能性が高まるだろう。