●日本に次いでECBも金融政策を維持。両者ともに景気判断は若干引き上げたものの、インフレ率が低迷しているという悩みも共通 ●ECBは、仏大統領選挙が完了した後、6/8の会合で緩和縮小に向け、声明文を修正する可能性がある。一方、早期のインフレ率上昇が見込みにくい日銀は、緩和方向でも不思議ではないが、殆ど打つ手はなく、次回6/15-16も現状維持か ●次の注目は、5/2-3の米FOMCだが、3月の利上げ効果を見定めつつ、政府の財政運営等に目配りをしつつ今回は据え置きの公算。6/13-14の会合で0.25%の追加利上げと予想する

日欧の金融政策の概要と見通し 4月27日、日銀の金融政策決定会合が終了し、政策の現状維持が決定した。同日に行われたECBでも、同じく金融政策は維持された。

両者ともに、景気判断を前回からやや上方修正した。日本では「緩やかな回復基調を続けている」から「緩やかな拡大に転じつつある」という表現に変更、リーマンショック前の2008年3月以来9年ぶりに「拡大」の文言が入った。

一方、両者ともに政策維持の理由として物価上昇の弱さを挙げた。それぞれ2%の目標を掲げる中、ユーロ圏の足元のコア・インフレ率は+0.7%に留まる(図表1)。それでも、ユーロ圏では、ドイツ等で急激に物価が上昇していることから、フランス大統領選が決着した時点で、イタリアなどの金融システムが脆弱な国々の状況を再確認の上、緩和縮小に向かうだろう。

一方、本日発表された3月の日本のコア・インフレ率(生鮮食品を除く前年同月比)は+0.2%と、目標までの距離は欧州より遥かに遠い(図表2)。さらに、生鮮食品・エネルギーを除くベースでは-0.1%と、横ばいという市場予想を下回り、マイナスに落ち込んだ。後述の個人投資家アンケートでも見られる通り、人々のインフレ期待は低下しつつある。今の金融政策だけでインフレ期待を盛り上げるのは極めて難しいだろう。

日本の金融政策効果の進捗 消費者物価指数は盛り上がらず、企業の長期調達コストへのメリットも縮小へ 消費者物価が上昇しない一方、金利は昨年に比べて長期を中心に上昇している(図表3)。このため、昨年急増した超長期調達は金利上昇でストップしている。今後さらに、米国の追加利上げの影響を受け中長期金利が上昇した場合、マイナス金利の数少ない恩恵であった企業の長期調達促進の効果は失われていくだろう。

個人のマインドはデフレ回帰気味:個人投資家アンケートの結果より 弊社では、毎回の日銀政策決定会合前に、金融政策や物価、家計に関する個人投資家アンケート調査を行っている。今回も4/20~24にかけて行った(結果は後掲)。

これによれば、前回の結果と比較して、物価の見通しに対して慎重な見方が増加した。例えば、「1年前に比べて、家計を引き締めている」(図表4)「今は投資や消費より、貯蓄すべきだ」(図表5)という回答がそれぞれ増加した。

インフレ見通しについては、「18年度頃に2%という目標には達しないと思う」との回答が76.3%と圧倒的多数で、しかも、この比率はアンケートのたびに上昇してきている(図表6)。日銀の金融政策への信頼感の低下が伺われる。

また、マイナス金利に対するネガティブな見方も引き続き強い。「日銀のマイナス金利はインフレ期待の拡大に貢献しているか」という問いに対して、過去最高の54.3%が「貢献していない」と答えた(図表7)。「今後日銀が何をしたら強気になれるか」、という問いに対しても、「マイナス金利の停止」という答えが最も多かった(図表8.)。なお、この理由として、多数の人が、実体経済への直接影響よりは、マインドの問題を挙げた(図表9)。

今後の見通し:米欧は順調に利上げ・緩和縮小へ。日本の中長期金利を押し上げ 現在個人投資家が予想する今後の金融政策の方向性は「緩和」と「引き締め」とが拮抗しており(図表10)、予想が難しくなっていることが伺われる。また、総じて市場の金融政策への期待感が減退している印象である。

むしろ、個人投資家の関心は、ますます米国の利上げのタイミングに移っていると思われる。我々は、5月のFOMCでは、3月の追加利上げの影響や、政府の財政運営を見定める必要があることから、金融政策は変更しない可能性が高いと考えている。

しかし、米国の資産価値や個人ローンなどには過熱感が強くなっている。雇用や経済成長、インフレ率が現状程度の回復を続け、海外リスクが再燃しない限り、6月の追加利上げを予想する。また、同時期にECBの金融政策も声明文等で金融緩和縮小への布石が打たれると想定し、これらの国の金利上昇につられる形で日本の中長期金利も上昇すると予想する。