DeepMacro社の分析を紹介する。雇用統計プレビューであるが、タイトルにある通り、焦点はインフレである。今週前半に発表された4月の個人消費支出(PCE)物価指数も弱かった。個人消費支出物価指数は、ヘッドラインと変動が大きい食品やエネルギーを除いたコアともに、前月比ではプラスに持ち直したものの、前年同月比では伸びが鈍化した。ヘッドラインは3月の1.9%上昇から1.7%へ、コアは1.6%から1.5%へ低下した。
米国の話から逸れるが、欧州連合(EU)統計局が発表した5月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.4%上昇と、予想以上に鈍化した。昨年12月以来の低い伸びである。再びグローバルにインフレが伸び悩み始めた。DeepMacro社が指摘する通り、インフレはグローバルに「スローダウン」の状態にあるということである。
われわれの分類に従えば、世界的にインフレは「スローダウン」の状態にある。今週金曜日に発表される米国の雇用統計ではインフレについての示唆が注視される。われわれのオリジナル経済モデルである米国「グロースファクター」と、標本数が3万社に及ぶ企業の人事部のウェブサイトをスクレイピングしたデータにもとづき、われわれは以下の予測をしている。
● 雇用の伸び:コンセンサス(民間部門で177千人)より若干強い。新規求人募集は基本的に前月と同水準。(われわれの「グロースファクター」で示される)より広範な経済活動は良好である。
● 産業の広がり:良好である。新規求人も採用も過半数のセクターで増加が見られる。
● 賃金:平均時間当たり賃金はマイルドに加速(マイルドであることを強調したい)。労働に対する超過需要(新規求人と採用の差)の反転は弱い(下記Figure 1ご参照)。
このような結果は、FEDが計画している非常に緩慢なペースでの利上げ方針を変更させることにはなるまい。従って、それは経済成長(と市場)にとってポジティブであろう。それはまた、「スローダウン」の状態に落ち込んだグローバルなインフレ・サイクルを反転させるほどの力強さには欠けるものであろう。
Figure 1. 労働に対する超過需要と平均時間当たり賃金 2014年1月 - 2017年5月 (前年同月比、%)