PORTFOLIO OVERVIEW(20 June 2017)

今週のFX1は、先週より幾分多くめに米ドル・ネット・ロングポジションを維持する。主な理由は、米国は引き続き他国をアウトパフォームする成長要因があるからだ。成長要因に関しては先週を通じて豪ドルのパフォーマンスは最悪だった。実際、豪ドルのポジションは、ロングからショートに転換している。

米国の成長要因の他国に対する優位性は既に揺らいで、昨年11月の大統領選のときに盛り上がった財政出動の期待は後退した。しかし、今ふたたびアウトパフォームする兆しが見えつつある。

今週のロング通貨は、日本円、ユーロと北欧通貨だ。円は強い成長要因が支えになる。ユーロも堅調に成長しており、バリュエーション面の割高さを相殺して買い持ちの判断となっている。

今週のショート通貨は、スイスフラン、英ポンド、カナダドル、豪ドル、そしてニュージーランド・ドルである。これは、弱まった成長要因を背景に豪ドルがショート通貨入りしたことを除けば、先週と同じである。DeepMacroのシステムはスイスの成長が鈍化していることを確認しており、よってスイスフランは弱くなり始めている。

先週のFOMCの結果は米ドルに対して比較的ブリッシュだった。もし米国の経済成長とインフレが他国より堅調であれば、他の国々は金融緩和の手を緩めることに二重の意味で慎重になるだろう。FEDは、従来「データ次第」としてきた態度を軟化させ、段階的な利上げにコミットしているように思われる。

DeepMacro

DeepMacro社は、ビッグデータ技術を利用して、自動的かつリアルタイムにグローバルなマクロ経済を観察・分析し、これを基にマーケットの分析を行う米国のリサーチ会社です。詳しくは、こちらをご覧ください。

DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルの説明

概要

DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルは、DeepMacro 社のグローバル・マクロ・システムに基づき、G10通貨についてシステマティックなポートフォリオ戦略を提供するものです。通貨の変動を説明する様々な要因を捉え、DeepMacro 社のリサーチ・システムの膨大なデータを、流動性が高く割安なポートフォリオに変換します。

キーファクター:

成長要因:

強い景気サイクルにある通貨を買い、弱い景気サイクルにある通貨を売ります。この判断は別のモデル体系であるDeepMacro 社の「Growth Factor」に基づきます。「Growth Factor」は主要国のビッグデータを含む経済成長に関するリアルタイム・インディケーターです。

キャリー:

高いキャリーの通貨を買い、低いキャリーの通貨を売ります。しかし、高キャリーは高リスクでもあります。したがって、リスクに見合うだけのキャリーが得られる場合のみ、このファクターによる投資判断を行います。

バリュエーション:

割安な通貨を買い、割高な通貨を売ります。経済理論では、高い生産性の伸び、高い輸出価格、大きな経常黒字の通貨は高くなることが示されています。このモデルのバリュエーション・ファクターはこれらの要因にもとづき割高・割安の判断をおこないます。

グローバル・リスク:

投資家のリスク回避姿勢が強まった時には、いわゆる「セイフ・ヘイブン(安全な寄港地)」通貨を買います。DeepMacro社では金融市場の価格に基づいて市場のリスク選好度を見積もっており、「グローバル・リスク・インディケーター(GRI)」を算出しています。GRIが点灯した場合、モデルは日本円、スイスフラン、米ドルなどへの買いを指示します。

ポジション調整:

モデルは対米ドルで9通貨のポジションを表示します。モデルは各通貨への集中度制限などリスク管理のルールを適用し、最適化を行った結果としてポートフォリオを構築します。

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チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから