PORTFOLIO OVERVIEW(13 June 2017)
今週のFX1は、前週対比若干増加した米ドルのネット・ロングを維持する。主な理由は成長要因の"変化"である。米国は特に英国とカナダに対して大きく優位に変化し、それがニュージーランドとスイスに対するマイナス方向の変化を補って余りある。今週はロングからショートへ、またはショートからロングへといった「サイド」の変更はなかった。
米国の成長は冴えないが、それでも他国、例えばカナダや英国などよりはましである。一方、バリュエーションの観点からは米ドルは割高で、このファクターに関しては、米ドルはショートの評価となっている。
米ドルに対して、ポートフォリオがロング・ポジションをとっているのは、大きい順に、日本円、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、ユーロそして豪ドルである。日本円は2週連続で最大の買い持ちであり、データの強度が増してきている。ノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、ユーロはざっくり言って同じサイズのロングだ。豪ドルはほぼ横ばいが続いているが、堅調な経済指標に支えられて緩やかに上昇するだろう。
一方、ショート・ポジションはスイスフラン、カナダドル、英ポンドとニュージーランド・ドル。スイスフランは依然として割高で景気サイクルは減速局面入りしている。英ポンドのショート・ポジションははっきりと増加。端的に言ってデータが悪いからである。FX1ポートフォリオは(計量モデルであるため)総選挙の影響についての見通しなどは有していないが、このようなショッキングな結果は英ポンドの地合いを緩やかに悪化させるだろう。ニュージーランド・ドルについては、成長は改善したが、バリュエーション面での割高さを打ち消すほどには至っていない。
為替市場はFOMCという重要イベントを前に足踏み状態となっている。DeepMacroの成長とインフレ・ファクターは、前回のFOMCが経済成長見通しとインフレ予測を発表した3月時点と変化がない。従って、われわれは、いわゆる「ドット・チャート」もなんら変化がないものと予想する。よって、米ドルもFOMCというイベントは「無風」で通過すると思われる。しかし、グローバルな経済成長は少しだけペースが落ちており、米国以外の中央銀行は早過ぎる出口政策については非常に慎重になるだろう。われわれは、このような金融環境はドルにとって適度に有利に働くと考えているが、「適度」であるという点を強調しておきたい。
DeepMacro
DeepMacro社は、ビッグデータ技術を利用して、自動的かつリアルタイムにグローバルなマクロ経済を観察・分析し、これを基にマーケットの分析を行う米国のリサーチ会社です。詳しくは、こちらをご覧ください。
DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルの説明
概要
DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルは、DeepMacro 社のグローバル・マクロ・システムに基づき、G10通貨についてシステマティックなポートフォリオ戦略を提供するものです。通貨の変動を説明する様々な要因を捉え、DeepMacro 社のリサーチ・システムの膨大なデータを、流動性が高く割安なポートフォリオに変換します。
キーファクター:
成長要因:
強い景気サイクルにある通貨を買い、弱い景気サイクルにある通貨を売ります。この判断は別のモデル体系であるDeepMacro 社の「Growth Factor」に基づきます。「Growth Factor」は主要国のビッグデータを含む経済成長に関するリアルタイム・インディケーターです。
キャリー:
高いキャリーの通貨を買い、低いキャリーの通貨を売ります。しかし、高キャリーは高リスクでもあります。したがって、リスクに見合うだけのキャリーが得られる場合のみ、このファクターによる投資判断を行います。
バリュエーション:
割安な通貨を買い、割高な通貨を売ります。経済理論では、高い生産性の伸び、高い輸出価格、大きな経常黒字の通貨は高くなることが示されています。このモデルのバリュエーション・ファクターはこれらの要因にもとづき割高・割安の判断をおこないます。
グローバル・リスク:
投資家のリスク回避姿勢が強まった時には、いわゆる「セイフ・ヘイブン(安全な寄港地)」通貨を買います。DeepMacro社では金融市場の価格に基づいて市場のリスク選好度を見積もっており、「グローバル・リスク・インディケーター(GRI)」を算出しています。GRIが点灯した場合、モデルは日本円、スイスフラン、米ドルなどへの買いを指示します。
ポジション調整:
モデルは対米ドルで9通貨のポジションを表示します。モデルは各通貨への集中度制限などリスク管理のルールを適用し、最適化を行った結果としてポートフォリオを構築します。
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