PORTFOLIO OVERVIEW(6 June 2017)

今週のFX-1ストラテジーは前週の米ドル・ショートから若干の米ドル・ネット・ロングに転換した。その主な理由はポートフォリオのポジション調整によるもので、いくつかの通貨をドルに対してロングにしたり、あるいはその逆にショートにしたりした結果生じたドルのネット・ロングであって、ドル独自の要因でドルの買い持ちに傾けたものではない。雇用統計に示されたように、米国の成長は他国に比べて緩慢な状況が続いている。また、米ドルはバリュエーションの観点から割高であり、われわれのポートフォリオではこの要因によっても米ドル・ショートとなっている。

FX-1ストラテジーは、米ドルに対して日本円、ユーロ、豪ドルと北欧通貨を買い持ちしている。最大の変更は日本円の買いポジションで非常に強いデータ系列が生まれた結果、最大のロングとなった。ユーロも依然としてロングをキープしている。ユーロ圏の経済成長が堅調だからである。ユーロ圏のデータは最近それほどの力強さはないものの、それでも総合的に見れば改善傾向にあると言える。豪ドルはここ数週間、漫然とした動きだったが、堅調な経済データを背景に緩やかな上昇に向かうと思われる。

もっとも大きなショートは相変わらずスイスフランとニュージーランド・ドルである。スイスフランは割高で、経済成長のリーディング・インディケータも軟化している。ニュージーランド゙・ドルは成長が緩慢でバリュエーション的にも割高である。

市場が注目するECB定例理事会がいよいよ明日に迫っている。ユーロはここしばらくECBの政策スタンス変更の期待から押し上げられてきたが、この点に関してわれわれはそれほど楽観的ではない。しかし、FX-1ストラテジーは、ユーロ圏の成長の強さに鑑みてロング・ポジションをとっている。もうひとつの市場の注目点は、英国の総選挙である。世論調査の結果は拮抗しているが、われわれのソーシャル・メディア分析では、保守党に対する弱いトレンドが出ている。それでも保守党は、予想されたほどの議席は取れないとしても勢力を盛り返すだろう。ちなみにFX-1ストラテジーでは、英ポンドについて先週のロングから今週はショートにポジションを変えている。

DeepMacro

DeepMacro社は、ビッグデータ技術を利用して、自動的かつリアルタイムにグローバルなマクロ経済を観察・分析し、これを基にマーケットの分析を行う米国のリサーチ会社です。詳しくは、こちらをご覧ください。

DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルの説明

概要

DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルは、DeepMacro 社のグローバル・マクロ・システムに基づき、G10通貨についてシステマティックなポートフォリオ戦略を提供するものです。通貨の変動を説明する様々な要因を捉え、DeepMacro 社のリサーチ・システムの膨大なデータを、流動性が高く割安なポートフォリオに変換します。

キーファクター:

成長要因:

強い景気サイクルにある通貨を買い、弱い景気サイクルにある通貨を売ります。この判断は別のモデル体系であるDeepMacro 社の「Growth Factor」に基づきます。「Growth Factor」は主要国のビッグデータを含む経済成長に関するリアルタイム・インディケーターです。

キャリー:

高いキャリーの通貨を買い、低いキャリーの通貨を売ります。しかし、高キャリーは高リスクでもあります。したがって、リスクに見合うだけのキャリーが得られる場合のみ、このファクターによる投資判断を行います。

バリュエーション:

割安な通貨を買い、割高な通貨を売ります。経済理論では、高い生産性の伸び、高い輸出価格、大きな経常黒字の通貨は高くなることが示されています。このモデルのバリュエーション・ファクターはこれらの要因にもとづき割高・割安の判断をおこないます。

グローバル・リスク:

投資家のリスク回避姿勢が強まった時には、いわゆる「セイフ・ヘイブン(安全な寄港地)」通貨を買います。DeepMacro社では金融市場の価格に基づいて市場のリスク選好度を見積もっており、「グローバル・リスク・インディケーター(GRI)」を算出しています。GRIが点灯した場合、モデルは日本円、スイスフラン、米ドルなどへの買いを指示します。

ポジション調整:

モデルは対米ドルで9通貨のポジションを表示します。モデルは各通貨への集中度制限などリスク管理のルールを適用し、最適化を行った結果としてポートフォリオを構築します。

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チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから