百貨店各社が毎月発表する月次売上速報 

本日のレポートでは大手百貨店(デパート)各社が発表している月次の売上速報のまとめと、バリュエーション面から見て投資妙味のありそうな銘柄をご紹介します。
まず、百貨店全体の売上の概況としては、7月までと同様旺盛なインバウンド消費の好影響で、下記の6社揃って前年同月比プラスの売上高となりました(表参照)。中でも松屋(8237)の好調さは突出しています。

松屋の好調さは今に始まったことではなく、上記6社の昨年9月以降の売上(前年同月比)の推移を見ると、常に松屋が突出して好調です(グラフ参照)。

ではなぜ、松屋だけがこのように好調なのでしょうか?その答えは立地にあります。当レポートでも何度か触れたとおり、現在訪日外国人観光客は"爆増"しています(グラフ参照)。中でも中国人観光客は買い物に使う金額が突出して高くなっています(表参照)。

そしてその中国人が好んで訪れている場所が銀座です。松屋以外の百貨店各社は様々な地域に出店しているため、銀座近辺の店舗の伸びが全体の中で薄まりやすいのに対し、松屋は銀座店と浅草店の2店舗のみの出店で、かつ浅草店は売上規模が大変小さく(昨年度の売上比率が銀座店と浅草店で9:1程度)、銀座店の売上が売上全体の大部分を占めています。そのため、銀座を訪れる外国人の増加がダイレクトに業績に反映しやすいというわけです。
また、銀座以外に訪日外国人の増加で大きく売上が伸びているのが、大阪です。関西国際空港の利用者が大きく増加しており、関西地方の中心地である大阪でも"爆買い"が起きています。J.フロントリテイリングの発表している店舗別売上高(前年同月比)を見ると大阪の心斎橋店と梅田店の売上高が大きく増加しています。また、直近第1四半期の免税品の全体に対する売上比率が昨年度に比べて大きく増加しており、訪日外国人の"爆買い"が業績へのインパクトを高めていることがわかります。

投資妙味のありそうな銘柄は?

百貨店各社のバリュエーションをご紹介します。以下の表に示したとおり、主要百貨店のうち近鉄百貨店以外の全ての銘柄が7月末比の株価パフォーマンスがTOPIXを下回っています。元々訪日外国人の増加で成長期待が高く株価が大きく上昇していたため、マーケット全体が大幅調整となった際に、特に売られやすかったということでしょう。

好立地の店舗を保有しているため特に成長期待の高い松屋や三越伊勢丹(3099)は依然として予想PERの高さ、予想配当利回りの低さからやや割高感がある(ただ、特に松屋は保有不動産の含み益が株価の評価に加味されていると考えられます)一方で、パルコ(8251)や高島屋(8233)、J.フロント リテイリング(3086)は予想PERがTOPIX(市場全体の平均)とほぼ同水準、PBRが1倍前後と割安感があります。特に高島屋とJ.フロント リテイリングは今年の4月以降一貫して既存店売上高が前年同月を上回っており、成長面から見ても投資妙味があるのではないかと考えています。