例年、この時期になると必ずと言っていいほど話題に上るのが「来る年(2018年)の米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーの顔触れと各人の金融政策スタンスについて」です。周知のとおり、FOMCには米連邦準備理事会(FRB)の7人の常任メンバーに加えて地区連銀総裁12人が参加しますが、ニューヨーク連銀総裁以外の「投票権」は4人の総裁が毎年輪番で行使することとなっています。

つまり、FOMCの投票権を持つ4人の地区連銀総裁の顔触れは毎年変わるわけで、その顔触れによっては全体の政策方針が大きく変化する可能性もないとは言えません。ちなみに、2017年に投票権を有していた4人の総裁のうち2人は「ハト派」、2人は「中道派」であると一般に認識されていたようです。

ハト派とされた2人のうちの1人、シカゴ連銀のエバンス総裁は、これまでに幾度も「性急な利上げは景気の悪化を引き起こすリスクが伴う」と警鐘を鳴らし、足下の低インフレ状態を大いに危惧し、12月のFOMCにおいても年内3度目の利上げに反対票を投じたとされています。また、もう1人のハト派であるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、これまでに幾度も「インフレ率が引き続き低いなか、利上げを行う理由はない」と繰り返し主張し、当然、12月のFOMCでも反対票を投じたとされています。

では、2018年に投票権を手に入れる4人の顔ぶれと政策スタンスはどのようなものでしょう。その4人とは、リッチモンド連銀のバーキン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁といった方々です。

まず、バーキン氏は去る12月4日にラッカー前総裁の後任として選出され、FRBによって承認されたばかりであり、その政策スタンスは今のところ明らかになっていません。次にボスティック氏ですが、同氏はこれまでに「インフレが軟調ななかでもFRBは緩やかな利上げ実施を目指す必要がある」と主張しており、明らかにタカ派寄りのスタンスであることがわかります。

実のところ、メスター氏もボスティック氏と同様に「インフレが軟調でも追加利上げを遅延する必要があるとは思わない」などとタカ派寄りの発言をしており、さらにウィリアムズ氏はこれまでに「米インフレ率は来年(2018年)に加速する見通し」、「力強い経済でインフレと賃金は上向くと予想」、「政策金利は徐々に引き上げるべき」などと明らかなタカ派姿勢を繰り返しアピールしてきている人物です。

このように、来る年にFOMCの投票権を手に入れる地区連銀総裁4人のうち少なくとも3人は明らかにタカ派であり、その点は2017年とは大きく異なります。おまけに、ホワイトハウスは11月29日に新たなFRB理事として著名エコノミスト(カーネギー・メロン大学教授)のグッドフレンド氏を示しており、同氏も「どちらかと言えばタカ派」と見る向きが少なくないようです。実際、同氏がFRB理事に指名されたとの一報が流れた際、市場で一時的にもドル買い・円売りの動きが見られていました。

そもそも、これまでFRB議長を務めてきたイエレン氏はハト派寄りでしたが、来年2月に議長となるパウエル氏は元々エコノミストでもなく、ハト派・タカ派というよりも全体の調整役として立ち振る舞って行く可能性が高いと見られているのです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役