例年、この時期というのは米国内でドル資金の需要が強まりやすいうえ、米系多国籍企業による本国への資金還流が起こるとの思惑も強まりやすい時期と言えます。また、そうした年末特有のドル需要逼迫トーク自体が市場参加者のマインドを刺激して、全体がドル高になびきやすくなるということもありますし、足下ではヘッジファンド勢も活発にドルショートの巻き戻しに動いている状況が見て取れます。

加えて、今年の年末は米税制改革法案の年内成立期待や、本日(13日)結果が明らかになる12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ見通し、先に米大統領が公表した今後のインフラ投資計画などが一段のドル高期待を演出しており、結果的に足下でドルは基本強気の展開を続けています。

逆に、この時期のユーロは対ドルでの売りに押されやすく、11月下旬まで一定の戻りを試していたユーロ/ドルも足下ではロング勢のポジション調整に伴う売りに押されやすい状況となっています。おまけに、このところは英国が欧州連合(EU)離脱に伴い支払う精算金を巡ってEUと大筋合意したことでポンドが強含み、対ポンドでもユーロ安に振れやすい状況が続いていました。

結果、下図に見るようにユーロ/ドルは、まず11月7日安値と11月21日安値を結ぶ下値サポートラインを12月5日に下抜け、ほどなく一目均衡表の日足「雲」上限や89日移動平均線(89日線)、21日移動平均線(21日線)などの重要な節目を次々に下抜ける弱気の展開となりました。今後、上向きで推移していた21日線が下抜きに転じてきた場合には、弱気のムードが一層色濃くなるものと見られます。

ここ数日は、幾度か日足「雲」下限の水準を試す場面も見られており、昨日は一時的にも11月21日安値に顔合わせする格好となりました。目先は、これらの節目水準が下値サポートとして機能する可能性もありますが、仮にこれらを下抜ければ一気に下値リスクが高まる可能性もあり、そこは要警戒であると思われます。

20171213_tajima_graph01.png

当面の下値の目安となり得るのは、一つに1.1680-1.1700ドルあたりの水準(図中・黒点線)で、これは7月下旬あたりから形成されていると見られていたヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)のネックラインに相当すると考えられていた水準です。結局、それは「完成し損じたヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ」という格好になってしまいましたが、それで同水準の意味がまったくなくなったわけではないと思われます。

振り返れば、10月26日に行われたECB理事会の結果を受けて前記の"ネックライン相当水準"を一旦は下抜けたわけです。その際には、理事会後の会見でドラギ総裁が来年1月以降の政策運営について「テーパリングではない」、「オープンエンドである」などと語ったことがユーロ売りの材料となりました。そして、また12月のECB理事会の日程(14日)が迫ってきました。またも、総裁会見の内容などを受けてユーロ売りが再燃しないか警戒しておく必要はあるものと思われます。

なお、前述した1.1680-1.1700ドルあたりの水準を下抜けた場合は、次に9月8日高値や10月26日高値などを結ぶ「以前の下降チャネルの上辺」にあたる水準(図中・青点線)が意識されやすくなる可能性もあるものと見られます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役