先週、日経平均は一時9月高値を抜いて半年ぶりの水準に上昇した。下値を切り上げるペナント型三角保ち合いを上放れてきた。今週は1万7000円台をしっかり固める動きとなるだろう。海外情勢や決算発表をにらみながらだが、1万7000円台半ばを超える場面もあり得よう。
先週末、安川電機が年初来高値を更新した。一時、前日比5%高の1684円まで上昇し、約10カ月ぶりの高値を付けた。前日発表の2016年4~9月期決算は減収減益だったが想定ほど悪化しなかったことから買いを集めた。4~9月期の営業利益は138億円と前年同期比27%減ったが、期初予想よりも28億円上振れした。主力の制御機器やロボットの販売が中国や欧米で想定以上に増えた。円高によるマイナス影響(58億円)を除けば増益で、本業は好調だ。マーケットはこういう業績を評価し始めた。いや、前回の4~6月期決算発表の時からすでにこうした市場の反応は見られていたのだ。
僕は先週の<展望>でこう述べた。
安川電機と言えば前回7月の4~6月期の決算発表は印象的だった。決算発表翌日、安川電機の株価は一時前日比6%高まで上昇し、約6カ月ぶりの高値をつけた。決算は大幅減益だったが、主力の制御機器などの中国向け受注が回復傾向にあることが判明。好感した買いが集まったのだ。これ以降、決算の数字自体は振るわなくても内容が悪くなければ株価が好反応を示すケースが散見された。市場では4-9月期の決算発表に関して、円高による業績下方修正懸念が根強いようだが、米国や中国の経済指標が堅調で円高が修正されるなか、前回の安川電機のようなケースが今回の決算発表シーズンでも多くみられるのではないか。
今回も前回とまったく同じパターンになった。安川電機は、17年3月期について想定為替レートを円高方向に変え売上高予想を下方修正したが、販売増での吸収を見込み利益予想は変えなかった。主力製品の足元の受注も底堅く、上振れ余地が残ると見るアナリストもいる。
前回決算では安川電機の決算に対する市場のリアクションの意味がじゅうぶん浸透していなかったが、今回は広く認識されているだけに、今後の展開へ波及効果が大きいと思われる。こういうパターンが続けば日経平均は1万7000円台半ばを超えてくるだろう。そもそも1万7000円台は累積売買代金でみて売り圧力が軽いゾーンだ。案外、ふわっと抜けてしまうかもしれない。
今後の相場を展望すれば、円高で業績下方修正⇒相場下落と見ていた弱気筋がシナリオの修正を迫られてじわりと水準を切り上げる展開となるだろう。
すでに業績に対する過度な懸念が後退する兆候が出ている。アナリストによる業績予想の上方修正から下方修正を引いて計算するリビジョンインデックスがプラスに転じてきた。言うまでもないが、上方修正が下方修正を上回ってきたということである。グラフはIFISが算定しているリビジョンインデックスだが、プラスに浮上するのは昨年9月以来、1年以上ぶりである。
この4~9月期は何度も1ドル100円の水準をたたきにいった円高に苦しめられたが、その苦しい時期をこの程度で乗り切れば、4~9月期が業績の底となり今後は改善に向かうとの見方がじわりとコンセンサスなっていくだろう。
その円高だが、昨年夏以来続いてきた円高もすでに終焉の兆しがある。ドル円相場ではすでに投機筋の巻き戻しが起きている。グラフはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)・通貨先物市場での投機筋のポジションだ。現在は9月下旬までに大きく膨らんだ対ドルでの円買越額が縮小しているが、同じことが5月や7月にも起きた。すなわちパンパンに張った円のロング(買い持ち)ポジションを投機筋が解消に動き円安となった。今回も所詮、投機筋のポジション調整に過ぎず、この円安も一過性、せいぜい年末までだろうという向きもある。ところが、今回は違う。
5月と7月のポジション調整による円安局面は75日移動平均に頭を抑えられて反転したが、今回は75日を突き抜けている。そもそも75日線自体が上向きに転じている。これはトレンドそのものが変わったということだ。
そして、投機筋のポジション調整もこの程度、とするのは、円安が中途半端に止まった5月と7月の水準をみているからであって、では1年前と比べたらどうか?そもそも現在のロング(買い持ち)ポジションが異常に大きいのであって、多少持ち高を減らして終わると言う保証はどこにもない。1年前は円ショート(売り持ち)だった。その時の為替レートは120円である。今回も単なるポジション調整を越えて、ロング・ポジションすべて解消しショートに転じる場合だってないとはいえないではないか。
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