いまや、金融・経済を専門の領域とする面々までもが軍事アナリストのごとく、北朝鮮問題を取り沙汰するようになっています。「相場にとっては一時的なかく乱要因に過ぎない」と理解はするものの、まったく不案内というわけにも行きません。「ミサイル発射準備の可能性」などという出所不詳の情報でも、それを受けて急に円が買われだしたりすることなどがあり、今しばらくは警戒の解けない状態が続きそうです。

とはいえ、北朝鮮絡みの情報が飛び込んでくるたびに値を下げるドル/円も、依然として108円台では一定の踏ん張りを見せており、この108円台のサポート帯がドル/円にとっては重要な"砦"の一つとなっています。思えば、年初来安値の108.13円をつけた4月半ば頃というのも何かと北朝鮮の話題が取り沙汰されているときでした。

既知のとおり、まずはドル/円の2016年6月安値から同年12月高値までの上昇に対する半値(50%)押しの水準というのが108円台後半にあります。そもそも、2016年6月安値の水準自体が2011年10月安値(75円台)から2015年6月高値(125円台)までの上昇に対する半値押しの水準でした。やはり、ドル/円にとって半値押しは重要です。

また、下図にあらためて見るとおり、目下のドル/円が位置するところには一目均衡表の週足「雲」下限の存在もあります。さらによく見れば、先週まで4週連続して週中に一旦は週足「雲」下限を下抜ける場面があったものの、終値では週足「雲」下限よりも上方に居留まるというパターンが繰り返されてきました。

同様に、ドル/円の週足・終値は4週連続して62週移動平均線(62週線)をも上回る格好となっています。この62週線とドル/円との関わりがいかに重要であるかは、過去に本欄で幾度も述べてきました。

ここであらためて見ておけば、2014年の5月下旬から7月下旬あたりにかけて、あるいは2015年の6月下旬から12月下旬にかけて、さらには今年の4月安値や6月安値がつけられた時期など、これまでに62週線がドル/円の下値サポートとして機能したケースというのは数多くあります。それも多くの場合、週足「雲」の上限あるいは下限が位置する水準との"共演"がそこに見られるのです。
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その意味では、やはり今週の週足ロウソクと週足「雲」下限、あるいは62週線との位置関係がどのようになるのかという点は、大いに気にかかります。今回は、3日に北朝鮮が6度目の核実験を行った後であり、また週末9日に北朝鮮建国記念日を控えているという特殊事情が絡むため例外的ではありますが、来週の週足の動きとも合わせてじっくり見定めておくことは非常に重要であると思われます。

9月は、米国における新年度の予算措置や連邦政府債務上限引き上げの問題など、幾つかの懸念材料もありますが、過去の事例を紐解けば最終的には何らかの落ち着き処を探って、お茶を濁すというパターンになることが大半であり、遅くとも10月半ば以降はドル/円の上値余地が徐々に広がりやすくなって行くものと見込まれます。仮にそうであるとするならば、当面のドル/円の押し目は中長期的に魅力の水準ということになるものと個人的には考えています。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役