前回の本欄では、ユーロ/ドルについて一目均衡表の日足「雲」下限の水準まで下押してきている点に触れ、このあたりで「一旦は下げ渋りやすいとの見方ができるが、当面の戻りは自ずと限られる」などと述べました。

実際、先週15日のユーロ/ドルは一時的に日足「雲」下限を下抜けたものの、ほどなく切り返して終値では日足雲のなかに留まり、その後は一旦1.0680ドルあたりまでの戻りを試すこととなりました。しかし案の定、その戻りはわずかなものに限られ、直ちに反落して昨日(21日)は、ついに日足「雲」下限を終値で下抜けることとなりました。

前回も述べたように、今年1月3日安値から2月2日高値までの上昇に対する61.8%押しが1.0526ドルの水準にあり、昨日は同水準で下げ止まることとなりましたが、これを下抜けると次に1.0500ドル処が試される可能性が高く、1.0500ドルをも下抜ける展開となれば、もはや1.0400ドル割れの水準まで目線を下げることも必要になってくるものと思われます。

諸々の政治リスクを抱えて弱気に傾きやすくなっているユーロとは対照的に、このところ徐々に強気の見方を増やしているのはオーストラリア(豪)ドル。下図にも見て取れるように、先週16日には一時88.18円まで上値を伸ばす場面があり、2014年11月高値から2016年6月安値までの下げに対する50%戻しの水準を超える動きとなってきています。

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振り返れば、本欄の2016年12月14日更新分で述べたように、豪ドル/円の値動きは昨年11月に行われた米大統領選を境にしてわかりやすく変化し、2014年11月から長らく形成されていた下降チャネルを上抜けると、次に62週移動平均線を上抜け、さらに昨年12月上旬には一目均衡表の週足「雲」上限を上抜ける動きとなりました。

週足「雲」よりも上方に位置するようになるのは、2015年1月以来約2年ぶりのことであったことから、その時点で筆者は「今後、一段の上値余地が拡がりやすくなる」と述べました。あれから2か月余りが経過し、実際に豪ドル/円はやや緩やかなペースながらジワジワと下値を切り上げる展開を続けています。

あらためて日足チャートを見てみると、前述したとおり、豪ドル/円は昨年の米大統領選を境に下降チャネルを上放れ、その後は暫く21日移動平均線(21日線)よりも上方で強めの推移を続けることとなりました。その後、幾度か21日線を下抜ける場面もありましたが、足下では再び21日線が下値を支えるような格好となっており、同時に一目均衡表の日足「雲」上限がガッチリと下値を支えていることもわかります。

前記のとおり、とりあえずは50%戻しの水準に到達したことで、目先は少々上げ渋る可能性もあるものと思われますが、月末までには米新政権が押し進める今後の経済政策の大まかなスケールや具体的内容が明らかにされ、それを市場が好感するようであれば、豪ドル/円の上値もさらに一段と拡がる可能性があるものと思われます。

その場合、当座の上値の目安となり得るのは、一つに心理的節目の90円、2015年12月高値の90.73円、さらには61.8%戻し=91.21円あたりになるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役