前回の本欄で想定したとおり、ドル/円は先週7日に一時111.59円まで下押した時点で一目均衡表の週足「雲」上限や89日移動平均線(89日線)などにサポートされる格好で底入れ・反発し、今週13日以降は21日移動平均線(21日線)をクリアに上抜ける展開となっています。

「次に何らかのきっかけで」と前回述べましたが、それは先週9日に米大統領が「2~3週間内に驚異的な税制改革案を発表する」と述べたと伝わったことや、昨日(14日)に行われたイエレンFRB議長の議会証言の内容が全体にタカ派的なものであったと市場に捉えられたことなどであったと言えるでしょう。

イエレン氏の証言内容が伝わった後、複数の米地区連銀総裁らが「非常に強いドルは輸出にインパクトを与える」、「3月利上げを支持する理由は見当たらない」などと述べたことで、とりあえずドルの上昇は目先頭打ちの状態となっていますが、市場にはなおも米大統領が公表する予定である経済改革の内容に期待するムードが強くあり、当面のドルの下値は基本的に堅いと考えることもできるように思われます。

ドルが基本強気の流れにあるなかでは、当然、ユーロ/ドルの下落基調も足下で強まっており、昨日は一時1.0561ドルまで大きく下押す場面もありました。本欄の1月25日更新分で述べたように、年初(1月3日)の1.0340ドルという安値から2月2日高値=1.0829ドルまでの上昇は、あくまで「リバウンド」の域を出なかったということになるでしょう。

下図を見てもわかるとおり、非常に特徴的なのは2月2日の高値が一目均衡表の日足「雲」上限にガッチリと上値を押さえられ、そこから直ちに下落へと転じたことです。いつも述べているように、外国為替相場は株式相場よりもテクニカル分析のセオリーに忠実に値動きすることが多く、ことに市場で最も取引量が多い通貨ペアであるユーロ/ドルの値動きは非常にセオリーに忠実であると言えます。

その意味では、目下のユーロ/ドルが今度は日足「雲」下限の水準まで下押してきていることも大いに注目されるところと言えるでしょう。一つには、このあたりで一旦は下げ渋りやすいとの見方ができ、実際に執筆のユーロ/ドルは昨日(14日)の安値=1.0561ドルからやや値を戻す動きとなっています。とはいえ、基本的にはドル強気の流れがあるのと同時に、仏大統領選の行方に対する不透明感やギリシャの財政問題などもあり、当面の戻りは自ずと限られるものと思われます。

また、以前下値をサポートしていた21日線をすでにクリアに下抜けていることや、日足の遅行線が日々線を下抜ける動きになってきていることなども、ユーロ/ドルが基本的に弱気の流れにあることをより強く印象付けていると言えます。

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前述した日足「雲」下限は、確かに強めの下値サポートと言えますが、それだけに同水準をひとたび下抜けると、そこからは一段と下落基調が強まる可能性も高いと言え、当面は十分に注視しておく必要があるものと思われます。仮に同水準を下抜けた場合、下値の目安となり得るのは一つに1月3日安値から2月2日高値までの上昇に対する61.8%押し=1.0526ドルですが、同水準をも下抜ければ、あらためて1.0500ドル割れの水準が視野に入ってきてもおかしくないものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役