前回更新分の本欄では、当面のドル/円の下値の目安について考察しました。なかで、本来は「112.50-60円処」と表記すべきところを「125.50-60円処」とするタイプミスがございました。ここに謹んでお詫びし、訂正させていただきます。

実際、足下のドル/円は112.50-60円処にサポートされる格好となっており、今後も一つには「同水準が下値サポートとして機能し続けるかどうか」に注目しておきたいと考えます。もちろん、一時的には同水準を下抜けることもあり得るのでしょうが、前回も述べたように一目均衡表の週足「雲」上限が位置する112.12円あたりや節目の112円などといった水準では押し目待ちの買いも入りやすいものと見られます。

ただ、いまだドル/円は年初から形成されている下降チャネル内で推移しているうえ、今週23日以降は日足「雲」のなかに潜り込んでしまって、なかなか上方視界が開けてこない状態にあることも事実です。やはり、年初からの調整が一巡したとの感触を得るには、前記のチャネル上辺や日足「雲」上限、ならびに21日移動平均線(21日線)などを順に上抜けて行くことが必要でしょう。

年初来、ドルが調整含みの展開を続けているのは、やはりトランプ米新政権の経済政策の不透明感が嫌気されていることによるものと思われます。しかしながら、閣僚候補の上院承認も遅れ遅れという状況にあって、今のところは、まだ政権の体をまともに為していないという点は、ある程度割り引いて考える必要もあるでしょう。少し時間はかかるのでしょうが、いずれ経済改革の具体像も少しずつ明らかになってくるものと考えられます。

実際、昨日(24日)もトランプ大統領が米・加パイプライン計画の推進や、製造業に関する届け出の簡素化に関わる大統領令に署名したことが伝わるや、市場ではドルがある程度買い直される展開となり、ドル/円が一時114円に迫る場面もありました。対ユーロでもドルはやや下げ渋る展開となっており、ユーロ/ドルの上値は少々重くなり始めてきたように見られます。

下図に見るとおり、ユーロ/ドルは昨年の年初あたりから形成していたヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)の転換保ち合いフォーメーションを完成させた後、一気に下落基調が強まって、今年の年初には一時1.0340ドルまで下押す場面がありました。同水準は、昨年5月高値からネックラインまでの当時の値幅を、昨年秋にネックラインを下抜けたところから下方にとった水準とほぼ一致しており、そこでとりあえず下げ一服となったのはテクニカル分析のセオリー通りと考えることもできます。

その意味で、年初からのユーロ/ドルの上昇は、あくまで「リバウンド」の域を出ないと考えることができるものと思われ、そろそろ上値の余地も限られてくる可能性があるものと見られます。ちなみに、昨年12月高値から今年の年初の安値までの下げに対する76.4%戻しは1.0750ドルあたりと計算され、目下はすでにその域に達しています。

また、上方には89日移動平均線(89日線)や1.0800ドルの節目が位置しており、さらに日足「雲」上限という一つの壁も待ち構えているような状態です。これらを上値抵抗と考えれば、そろそろ年初からの「リバウンド」が一巡となってもおかしくはないように思えます。当面は、このあたりで戻り待ちの売りが出てくるのかどうか、慎重に見定めたいところです。

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コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役