先週25日にドル/円は一時113.90円まで上値を伸ばし、そこで一旦「上げ一服」といった状況になっています。以前から本欄では「ドル/円の月足に注目」と繰り返し述べてきましたが、あらためて月足チャートに幾つかの重要なテクニカル指標を描画してみると、直近高値の113.90円は31カ月移動平均線(31カ月線)が位置するところとほぼ同水準であることがわかります。
振り返れば、ドル/円は今年4月に31カ月線を下抜け、その後は11月初旬まですっと62カ月移動平均線(62カ月線)をサポートとしながら、調整色の色濃い展開を続けていました。本欄の8月3日更新分でも述べたように、その間は一目均衡表の月足「雲」上限が位置するところや月足の「遅行線」と26カ月前の月足ロウソクとの位置関係も大いに注目されるところとなりました。個人的には、とくに月足「雲」上限が9月、10月以降にその水準をグンと切り上げて行く点に注目し、当時は「この8月、9月は押し目を買い拾う好適なタイミングをじっくりと計る時間帯ということになる」と述べています。
実際、ドル/円の月足は62カ月線や月足「雲」上限をサポートとしながら10月、11月に底入れから切り返す動きとなり、結局は月足の「遅行線」も26カ月前の月足ロウソクが位置するところを上から下にズドンと突き抜けるといった動きにはなりませんでした。そして、今や既に31カ月線までの戻りを達成しています。当面は、この31カ月線が上値を押さえる可能性もあるものと思われますが、同線をクリアに上抜ければそこから一段と上値余地は拡がることとなるでしょう。
次に、ドル/円の週足チャートに幾つかの重要なテクニカル指標を描画し、今後の行方について考えてみます。下図に見るように、ドル/円は11月に入ってから31週移動平均線(31週線)、昨年6月高値から今年6月安値までの下げに対する38.2%戻し、62週移動平均線(62週線)、一目均衡表の週足「雲」下限などを次々と上抜け、ついに先週は50%戻しを達成することとなりました。なお、この間に週足の「遅行線」は26週前の週足ロウソクが位置するところを上抜けてきています。
ただ、先週25日に一時114円に迫る動きとなったところでは、さすがにスピード警戒感も強まりました。まして、今週は本日(30日)の石油輸出国機構(OPEC)総会や週末の米雇用統計発表、12月4日のイタリア国民投票など、其々の結果が大いに気になる重要なイベントが数多く控えており、どうしても様子見気運が強まりやすいところです。このあたりで一旦利益確定しておきたいとする向きが増えるのも当然と言えます。
基本的に中期的なドル高基調は今後も継続するものと考えられますが、当面はいまだ不透明感が強いOPEC総会やイタリア国民投票などの結果次第で、一時的にも一段の下値を試す場面がないとは言えません。その場合は、まず週足「雲」下限や62週線が位置する水準が一つの下値の目安になるものと考えられます。それらの節目をも下抜けた場合は、前述した38.2%戻し=110円割れの水準を一時的に試す可能性もあると思われます。
とはいえ、来週以降には欧州中央銀行(ECB)理事会や米連邦公開市場委員会(FOMC)の日程も控えており、基本的にはドル強気の流れが続きやすい12月ということになると思われます。よって、足下の調整が一巡した後は再び上値を試す流れとなり、さしあたっては61.8%戻し=115.60円あたりの水準を試す可能性が高いと個人的には考えます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役