この一週間は、とくにユーロ/ドルの下げが目立つ相場展開となりました。本欄の10月12日更新分で想定したとおり、先週20日にECB理事会が行われる前の段階で1.0950ドルの水準まで下押し、さらにECB理事会後には6月24日のブレグジット・ショック後につけられた安値=1.0909ドルをも下回る展開となりました。
周知のとおり、10月のECB理事会では既往の政策が据え置かれることとなりました。後の記者会見に臨んだドラギ総裁によれば「政策委員会は今回の会合で量的緩和(QE)プログラムの延長もテーパリングも議論しなかった」とのこと。それでも市場は「テーパリングも議論しなかった」という言葉の方にあえて強く反応します。
基本的にドルが強めの基調を継続していることもあり、市場は動きやすい方(ユーロ売り)にベットした方が得策であると考えた部分もあるでしょう。もちろん、ECBが12月の政策理事会でQEプログラムの期間延長を決める可能性が高いとの見方が市場に燻っていることもユーロの下げに一役買っている模様です。
テクニカルの観点からすると、ユーロ/ドルが6月24日安値=1.0909ドルを下回ったことで、同水準をネックラインとするダブルトップが完成したように見えます。また、3月10日安値と6月24日安値を結ぶ直線をネックラインと考えれば、年初から形成されていた三尊天井(ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ)が完成したと考えることもできそうです。いずれにしても、いわゆる「転換保ち合い」のフォーメーションが完成したことで、今後の下げ余地は拡大する可能性が高いと見ることができるものと思われます。
米大統領選の日程が徐々に迫り、トランプリスクが完全に払しょくできない限りは、いたずらにドル買いを積極化しにくい状況であることは否定し得ません。当面は選挙結果待ちのモードに入り、あまり派手な値動きは見られなくなる可能性も高いとは思います。ユーロ/ドルにあっては、むしろ一旦下げ渋る動きが見られる可能性もあると思われますが、やはり米大統領選を通過した後はドルの上値の重石が外れ、ユーロ/ドルがもう一段の下値を試す可能性も十分にあるものと見られます。
その場合、当面の目安となり得るのは、まず3月初旬に下値を支えた1.0820ドルから1.0800ドルの節目あたりになると思われ、さらに少し長い目では年初来の安値水準である1.0700ドル前後の水準を試す可能性もあると考えることができるように思います。結果的に、ユーロ/ドルの下落を通じて、そのぶんドル/円の水準が押し上げられるということもあり得るでしょう。
他方、いま足下で日経平均株価の上値余地が拡大する可能性を強めており、それ自体がドル/円の下値を支える可能性も大いにあるものと思われます。昨日(25日)の日経平均株価は、ついに重要な節目の一つである1万7,250円を超えてきており、もう一息で年初から形成してきた"大底圏"から脱出しそうな状況になってきていると言えます。
過去1年の価格推移において日経平均株価は1万6,500円から1万7,250円の価格帯での累積売買代金が多く、今後、同価格帯を超えてきた場合には、そこから上値が軽くなる可能性も高いと見られます。こうしたことから、米大統領選の日程を通過した後のドル/円は、それまであった上値の重石が外れ、いよいよ大底圏から脱出する動きが本格化して行くような展開になるものと個人的には見ています。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役