昨日(9月6日)発表された8月のISM非製造業景況指数や米労働市場情勢指数(LMCI)が市場の事前予想を大きく下回る結果となったことで、8月中旬以降、一定の盛り上がりを見せていた9月米利上げの可能性に対する期待は大幅に低下することとなりました。市場に吹く風の向きが一気に大きく変わったという印象です。

その結果、弱めの米経済指標が発表された直後からドル/円は急落することとなり、本日(7日)の午前中(日本時間)には一時101.19円まで下押す場面もありました。やや過剰反応という気もしないではありませんが、これだけ大きく下げるということは「それだけ9月米利上げ期待が強かった」ということの表れでもあると考えられます。

先週2日に発表された8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが前月比+15.1万人と事前の予想には届かず、平均時給の伸びも前年同月比+2.4%という水準に留まりました。とはいえ、前月(7月)のNFPが27.5万人に上方修正されて6月と7月の合計で54.6万人となったことや、7月の平均時給の伸びが前年同月比+2.7%に上方修正されたことなどは、やはり前向きに評価していいものと思われます。よって、8月の米雇用統計発表後も9月米利上げの可能性に期待する向きは少なからずありましたが、足下ではそうした期待が急速に萎んできています。

そんななか、日本時間の8日未明には米地区連銀経済報告(ベージュブック)の公表が予定されています。8月半ば以降、NY連銀のダドリー総裁やサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁、FRBのフィッシャー副議長らが立て続けにタカ派的なコメントを発してきたことを思えば、今回のベージュブックもさほど弱めの内容にはならないものと思われます。したがって、ここからドルが一段安となることを安易に想定することも多少の違和感が伴うところではあります。

ドルが強く売り崩されるなかで、昨日大きく上昇したユーロ/ドルについても、今後の戻りは自ずと限られるように思われます。9月のECB理事会を明日(8日)に控えるなか、ドラギ総裁が今後の追加緩和の可能性に言及することも考えられ、ここでユーロの一段の上値を追って行くことには相当のリスクが伴うものと考えられます。なおも欧州経済の減速懸念はなおも拭えず、いまだイタリアに代表される銀行不安も解消されたわけではありません。むしろ、夏季休暇明けで再び問題が蒸し返される可能性に警戒しておくことも必要であると言えるでしょう。

下図で確認できるとおり、6月下旬のブレグジット・ショックで急落した後、ユーロ/ドルは一定の戻りを試す動きとなっているものの、昨年12月安値と今年3月安値を結ぶ以前のサポートラインが足下では上値抵抗のようになっており、7月5日の高値も8月18日の高値も結果的には当面の戻りの限界となりました。

8月下旬以降は一目均衡表の日足「雲」が下値を支えるような格好となっていますが、今後のドラギ総裁発言や欧州銀行不安の行方などによっては、あらためて日足「雲」を下抜ける展開となる可能性もあるものと思われます。仮に日足「雲」を下抜けた場合には、まず8月5日安値が位置する1.1050ドル処が意識されやすくなり、同水準をも下抜けた場合には1.1000ドルの重要な節目を試す可能性もあるものと、今のうちから一応は想定しておくことが必要であると考えます。

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コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役