8月に入ってからというもの、多くの市場関係者は「夏季休暇中は手かがり材料不足で閑散とした相場展開が暫く続く」、「次の目ぼしい材料と言えば、8月下旬にジャクソンホール(ワイオミング州)で行われる経済シンポジウムでのイエレンFRB議長講演ぐらい」などといった指摘を繰り返してきました。実際、この8月の外国為替相場は酷い閑散ぶりでした。とはいえ、早いもので今はもう8月下旬。今週26日には、市場が大いに関心を寄せているイエレンFRB議長の講演が行われます。

それに先立って先週は、16日にニューヨーク連銀のダドリー総裁がFOXビジネス・ネットワークのインタビューに「追加利上げが適切となる時期にジワジワと近づいてきている」と応え、9月のFOMCで利上げを決定する可能性はあるかとの問いに「あり得ると思う」と返しました。そのうえで、総裁は市場が足下で利上げの可能性を過小評価していると警告したのです。

また、18日にはサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が「米経済には早期の利上げを正当化する十分な強さがある」と述べています。ダドリー、ウィリアムズ両総裁はどちらかと言えば慎重派で知られており、その考え方はイエレンFRB議長に比較的近いとされています。加えて、週末にはフィッシャーFRB副議長からも年内の追加利上げに含みを残す発言がありました。ややタカ派的と言える発言がこれだけ出揃うと、さすがに積極的なドル売りに走ることも手控えられるというものでしょう。

実際、このところのドル/円は100円前後の水準で比較的底堅く推移しています。100円を割り込む場面も幾度か見られてはいますが、100円割れの水準はすぐに買い拾われるといった状況です。今週のイエレンFRB議長講演の内容をいたずらに推測することは極力控えたいところですが、「ダドリー氏やウィリアムズ氏、フィッシャー氏らの発言を真っ向から否定するようなものにはならないだろう」と見る向きも多いものと見られます。

下図に見るように、このところドル/円が底堅い推移を続けていることから、今まさに日足のMACDとシグナルラインのゴールデンクロスが示現しようとしている点は一つ注目に値するところと言えます。過去においても、ゴールデンクロス示現後の相場は一定の戻りを試すというパターンが繰り返されてきました。

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また、あらためて米10年債利回りの推移に注目してみることも重要です。利回りの推移を示す日足チャートを見ると、このところ下値が着実に切り上がっており、7月初旬あたりから三角保ち合いのような形状を為してきていることがわかります。今のところ上値の壁が1.58-1.60%あたりのところにあり、ここを上放れてくると6月の英国民投票前に垣間見られた1.75%前後の水準がまずは意識されやすくなるものと見られます。

思えば、英国民投票前のドル/円の高値は106.80円でした。同水準までの戻りを意識するのは少々気が早いとしても、近くドル/円が底入れしたならば、まずは上図でも確認できる今年1月(29日)高値からのレジスタンスラインを試す可能性が高いと見られます。もちろん、その前に一目均衡表の月足「雲」上限などを一旦試す可能性もないではない(8月3日更新分参照)ものと思われますが、いずれにしても底入れの時期はジワリと近づいてきているのではないかと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役