あろうことか、先週23日に英国で実施された国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まってしまいました。過半の人々の感情が理性を超え、怒りが経済合理性に勝ってしまったわけです。周知のとおり、英EU離脱が確定的なものとなった時点から、ポンド/ドルやユーロ/ドル、ドル/円やクロス円、世界各地の株価指数などは一時急落。文字通り、英国は"取り返しがつかない"選択をしてしまいました。

英EU離脱が決まったことを受け、ユーロ/ドルは6月24日、一時1.0909ドルまで大幅に下落する場面がありました。同日の日足ロウソクは長めの下ヒゲを伸ばす格好となったものの、本欄の6月15日更新分でも注目した「昨年12月3日安値と今年3月10日安値を結ぶサポートライン」を終値で下抜けてしまいました。同ラインは昨年12月初旬から形成されていた中期上昇チャネルの下辺でもあり、結果的にユーロ/ドルは同チャネルを下放れることとなったわけです。

ひとたび上昇チャネルを下放れると、テクニカル的に相場は売りになびきやすくなると見るのがセオリーです。足下では、売り一服から一定の戻りを試す動きも見られてはいますが、重要な節目の一つである1.1000ドル処や200日移動平均線(200日線)が位置するところ(現在は1.1097ドル)では上値が押さえられやすくなっているように見られ、戻り一巡後は再び下値余地を拡げるリスクに警戒を要するものと思われます。なお、昨年10月下旬にユーロ/ドルが中期上昇チャネルを下放れた場面では、12月初旬までに1.1100ドル処から1.0500ドル台まで一気に下落することとなりました。

その一方でドル/円は、英EU離脱確定の報を受けて6月24日に一時99円前後の水準まで急落する場面がありました。この99円処というのは、100円以下の水準にまともな出会いがなかったために大きくレートが飛んでしまった末に偶然つけた水準と考えることもできますが、下図に見られるように、62カ月移動平均線(62カ月線)が一応の下値支持として機能したと見ることもできるものと思われます。

また、もう一つの理解として「2011年10月安値から2015年6月高値までの上げに対する50%押し=100.59円には到達したが、61.8%押し=94.63円には達しなかった」とすることもできるでしょう。さらに言えば、一目均衡表における月足の「遅行線」が、今のところ月足ロウソクが位置する水準を下抜ける寸前で下げ止まっているという点にも注目しておきたいものと思われます。

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場合によっては、今後あらためて61.8%押しの水準である95円前後を試す可能性も否定はできません。ただ、いずれにしてもこのあたりが"昨年6月高値からのドル/円の調整の終点"(円高の流れは終わる)と考えていいのではないかと筆者は個人的に考えます。下方に控える分厚い月足「雲」の存在も見逃せませんし、この「雲」上限が今後その水準をグンと切り上げて行く点にも注目しておきたいところです。

今しばらくは、まだ予断の許されない状態が続くものと見られますが、英EU離脱が判明する前につけられた6月24日の高値=106.80円処をいずれ上抜けてくるような動きとなれば、それは「調整終了で基調転換」の可能性を考慮し始めるうえで、最初の感触として捉えることができるのではないかと考えます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役