世界中でメガFTA交渉が進められている。メガFTAとは、多国間の巨大な自由貿易協定のこと。2013年、日本のTPP(環太平洋パートナーシップ)交渉参加に加え、日EU・EPA、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉が一気に始まった。これらは何れも数年内の妥結を目指しており、WTOドーハ・ラウンドが難航する中、世界の通商交渉の新たな舞台として存在感を高めることになろう(図表1)。

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これらのメガFTAは、世界経済にとってどのような意義を持つのだろうか。2つの大きな流れを俯瞰してみたい。

第1は、グローバル・スタンダードになり得る通商ルール作りである。TPP、日EU・EPA、TTIPは先進国主導で交渉が行われており、目指す自由化の度合いが高い。米通商代表部フロマン代表がTPPやTTIPは世界の貿易システムに新たな規律を導入することになると述べているように、これらのメガFTAはその先のグローバルなルール作りをにらんでいる。

TPP、日EU・EPA、TTIPは何れも、物品市場アクセス、サービス、政府調達、知的財産、投資、環境、労働など幅広い分野の自由化やルール作りを目指しており、また日EU・EPA、TTIP ではこれらの分野に加えてEUが非関税障壁の撤廃等に力を入れるなど、交渉全体のレベル感は従来になく高い(図表2)。これらのメガFTAは、日・米・欧が軸となり、最終的に一定の高いレベルの内容を含む形に収斂していくだろう。日本としては、こうしたグローバル・スタンダードを形成する動きに、国益を踏まえ、積極的に関与していく必要があろう。

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第2は、アジア太平洋の連携強化である。TPPとRCEPは、高い成長ポテンシャルを有するアジアにおいて貿易・投資ルールを整備し、さらなる発展を促進する。RCEPの自由化の度合いはTPP等に比べると低いが、中国、インド、アセアン等の国々・地域を含むルール作りの枠組みとして意義深い。日中韓FTA交渉やアセアン共同体設立に向けた動きも進む中、RCEPはこれらと連動しつつ整備されることになろう。TPPとRCEPが発展すれば、より広範なFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)につながる可能性もある。

TPPやRCEPは、企業のサプライチェーンの構築にとっても重要である。多くの日本企業がすでにアジアに進出して調達・製造・販売等のサプライチェーンを構築しているが、アジア太平洋の広範な地域をカバーするTPPやRCEPを活用すれば、一層戦略的な事業展開を行うことが可能になろう。

今月開催されたWTO閣僚会議ではドーハ・ラウンドが部分合意にとどまり、TPP交渉も越年するなど、多国間交渉の困難さが露呈した。他のメガFTAについても交渉は一筋縄には行かないと思われるが、出来るところから合意を形成し、段階を踏んで自由化を深めるやり方もあろう。世界経済が持続的な発展を遂げられるよう、メガFTAを通じて地球環境等の要素にも配慮した質の高いグローバル・ルールが策定されるとともに、並行してWTOの多国間・有志国間の合意形成も進み、世界の国々に遍く貿易・投資の恩恵が及ぶ未来が拓かれることを期待したい。

コラム執筆:金子 哲哉/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

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