東京株式市場は今週から9月相場入り。月替わりとはいっても、雰囲気は変わりません。米国による中国への2,000億ドル規模の追加関税への懸念や、アルゼンチン・ペソを中心に新興国通貨の下落懸念が重荷です。一方、今週注目すべきイベントとしては、日経平均採用銘柄の定期見直しの発表が予定されています。毎年9月上旬に発表があり、10月の第一営業日に入れ替えが実施されるというもの。発表日は毎年違いますが、今年は9月4日前後と予想されています。
先行して入れ替え予想のレポートが証券会社から出るわけですが、今年は採用銘柄として、任天堂(7974)、サイバーエージェント(4751)、スタートトゥデイ(3092)など。一方、削除銘柄として、宝ホールディングス(2531)、東京ドーム(9681)、古河機械金属(5715)などが挙げられています。
ただ、値がさ株の任天堂が採用されてしまうと大変なことが起こりまねません。ありえないと思いますが、みなし額面50円(50円額面に換算して計算)で採用されてしまうと、大量の買い需要が9月28日(9月の最終営業日)の大引け値で発生してしまう。半面、除外される銘柄との株価の差によっては、既存の採用銘柄に広く大量の売りが出てしまう可能性が高まるからです。そういったように市場に混乱をきたすので、採用されるとしても、500円額面でしか考えられません。
思い起こせば、ITバブルの大天井から調整局面にあった2000年4月14日(金)の引け後、4月24日(月)からの銘柄入れ替えが発表されました。30銘柄の同時入れ替えです。日経平均に連動するインデックスファンドなどは、前営業日の4月21日(金)大引けまでに入れ替え作業をしなければならない。通常ならばその間、除外銘柄が売られ、採用銘柄が買われることになります。しかも、除外銘柄は銘柄コードの4000番台や5000番台を中心にオールドエコノミー(重厚長大産業)の低位株が大半であった一方、採用銘柄はTDKや東京エレクトロンなどの値がさハイテク株が中心でした。採用される銘柄と削除される銘柄の株価合計に大きな差がなければそんなに問題は大きくならなかったのですが、なんと、採用される銘柄の合計株価が削除される銘柄の合計株価を数十倍も上回りました。資金が限られているファンドは差額分を買うために、30銘柄以外の195銘柄を売却し手当てしなければいけない。その売りが日経平均を押し下げていったわけです。
除外銘柄は日経平均から除外される前に下がり、採用銘柄は採用される前に大きく上昇します。しかし、実際、採用された後は買われ過ぎや割高になっているので反動で下落し、日経平均はさらに下げてしまう。その結果、NT倍率(日経平均をTOPIXで割った相対指数)は10倍割れの時代に入っていきました。今、NT倍率が13倍台まで拡大して話題になっていますが、1985年以降1999年ぐらいまでは、12倍~14倍で推移していました。なので、今の水準は過去の水準に戻っているだけといえます。
それを踏まえ、日経平均とTOPIXのITバブルの高値を起点に両者の値動きを振り返ると、面白いことがわかります。ITバブル崩壊後の安値となった2003年からの上昇相場ではTOPIXは2007年高値でITバブルの高値を上抜けた一方で、日経平均は上抜けることができなかったのです。そして、2007年高値からリーマン・ショックを通じた大きな下落相場では、日経平均は2008年10月が安値(バブル崩壊後の安値)となりましたが、TOPIXは2012年がバブル崩壊後の安値です。
そして、アベノミクス相場が始まった2012年からの上昇相場では、日経平均は2007年高値を上抜けましたが、TOPIXはその直前の安値が日経平均に約4年遅れたため、2007年高値を上抜けることができませんでした。
このように、日経平均の突発的な2000年4月の銘柄入れ替えによって、両指数の間に大きな差を生じさせてしまいました。
しかし、今は両指数ともにITバブル時の高値を上抜け、ようやくNT倍率の水準とともに、正常に戻った状況になっているといえます。
東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
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