ボラティリティが高まりかねない懸念材料が重なっています。VIX指数(恐怖指数「ボラティリティ・インデックス」)も、ここから6月後半に向けて上昇する可能性が高い。
米朝首脳会談は再び開催に向け調整に入ったようですが、トランプ政権が自動車に対する輸入関税の導入検討を示唆したことで、6月の日米通商協議への懸念が高まるかたちになっています。トヨタ自動車の株価の下げは何ですか、これ。日足のローソク足で長大陽線を形成した5月9日の安値を見事に下回ってしまいました。5月28日までで8日連続陰線です。8日連続は今年に入って2度目です。トヨタ株がですよ!
通商問題は日本の企業業績や経済に直接影響を与える要因だけに、株式市場には逆風です。輸入関税に関する報道直後には自動車株を中心に主力の外需関連までも大きく下落しており、日経平均の調整以上に中身が悪い印象を受けます。ここにきて、イタリアの政局不安、ユーロ圏の景況感の悪化などもクローズアップされており、こんな状況で誰が株を買うのか。

米国では、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)が近づく中、今週は重要経済指標の発表が続きます。米10年債利回りは上昇が一服し、25日線に続き、足元は75日線までも下回りそうになっています。何ですか、このおかしな動きは?経済指標に超サプライズでもない限りは上昇しづらく、予想前後の着地であればアメリカ株にとっては支援材料になるはず。ですが、この金利の動きはおかしいし、今晩のアメリカ株もやはり怖いです。
一方、日経平均は3月安値から2カ月間上昇が続いたあとの調整局面にありますので、値幅・日柄調整にしばらく時間を要する可能性が高く、アメリカ株が仮に堅調であっても、短期的には追随できない場面が増えそうです。

円ポジションをシカゴの建て玉でみると、売り買いがほぼ拮抗しています。こんな状況なので、米10年債利回りの低下は素直にドル安・円買い圧力になってくる。そんな状況で、日本株を積極的に買えるわけがなく、売り方優位のバイアスが続く中で外部環境に悪化がみられれば、裁定取引を解消する現物売りにもつながり、下落幅を広げる展開なども想定しておきたいところ。
日経平均の下値の目安としては、75日線(21,905円 28日現在)、200日線(21,747円 同)などが重要になります。高値からの調整値幅の目安となるのは、2/27高値~3/5安値までの1,565円、3/12高値~3/26安値までの1,624円幅が重要。直近5/21高値(23,050円)から同値幅下げると仮定すると、21,426円~21,485円水準までは下げの許容範囲となります。
ただ、筆者が今の局面と酷似と思っている、2015年の急落後の調整過程では、75日線付近でいったん止まりましたが、そこから再び下落局面に入った経緯があります。今回もそうなるか、それとも、3月安値に対する二番底にとどまるのか?

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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