東京市場はあすから12月相場入り。12月の大きなイベントは12月12日-13日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)があります。ただ、FOMCでの利上げ確率はかなり高くなっており、実際に利上げがあっても市場の反応は限定的でしょう。そういう状況下、ダウ平均やナスダック指数などの米主要指数の高値更新が続けば、東京市場でも影響を受けやすい主力銘柄への個別物色は旺盛とみられます。加えて、割安感のあるREIT市場にも資金流入が見受けられ、東証REIT指数は急反発となっています。マザーズ市場などにもっと資金を振り向けてくるかも短期的な見どころとなります。

日経平均は16日安値(21,972円)と17日高値(22,757円)とのレンジでモミ合いが続いており、方向感が見出せません。17日高値を上回ることができれば、9日高値(23,382円)に向けて少し強くなる場面があると思います。ただ、9日は出来高も高水準となったため、そこで買い方となった投資家の戻り待ちの売りをこなす時間は必要でしょう。
また、市場でささやかれている話として、日経平均に連動するリンク債の早期償還に伴う売りが上値を抑えた?抑える可能性が高いらしいのです。
どういうことかと言いますと、日経平均のリンク債はデリバティブを組み込んだ仕組み債の1つです。日経平均の観察期間中にあらかじめ決められた水準以下になった場合、額面金額ではなく、株価の変動に連動して償還金額が変動するリスク商品です。あらかじめ決められた水準以下になることを「ノックイン」価格といいます。しかし、早期償還条項などもついていて、判定日に株価が「ノックアウト」価格まで上昇していれば額面で早期償還される仕組みです。投資家が購入する日経平均のリンク債にはプット売り(相場は下がらない)が含まれていて、相対する運用側はプット買い(相場は下がる)をします。でも、そのままだと相場が上昇したときにリスクがあるため、ヘッジのために先物で買い(デルタヘッジ)を入れます。
今回、日経平均が今よりももっと低い水準の時に設定した日経平均のリンク債は、当時から高い「ノックアウト」価格に短期間で到達してしまったため、早期償還となってしまい、買っている先物を売り戻さなければならない状況になったようです。
これだけ短期間で上昇する局面では、誰かが不具合を被るわけで、そういった事情ありの売りはいつもあるわけです(5月もそんなこと言っていたような)。そんな話が世の中に出てくるということは、まだしこたま残っているとも言いがたい。そんなのは短期の投資家には重要でも、次にバブル高値を狙う投資家にはどうでも言い話なのです。

そこで、当面イメージできる2つの動きがあると思います。1つ目は、25日移動平均線(22,326円、28日現在)上をサポートに大きな値幅でのモミ合いを続けつつ、エネルギーが蓄積されたのち、9日高値を更新していく展開が結構ありえる動きではないでしょうか。2つ目は、このまま16日安値と17日高値の間で小さくモミ合ったあと、短期的に直近安値を下回っていくケースも考えられます。9日高値を起点に「下げ→戻り→下げ」の二段下げのよくあるパターンです。

2つの動きのうち、どちらになるかは、ドル/円がカギを握ると思います。まずは、12月1日発表の米11月ISM製造業景況指数がポイントです。9月は60.8と13年4カ月ぶりの高水準でした。連動性が高い日経平均のこれまでの上昇要因になってきたといっても過言ではありません。ただ、2000年以降のピーク水準(60~61.4)に近づいてきた点では、この先は景気のピークアウト懸念もありと筆者はみています。実際、10月は58.7まで低下し、事前の予想も下回る結果となりました。
足元の米長期金利(米10年債利回り)は2.3%~2.4%のモミ合いでボラティリティが低下し、円安方向への動きを鈍くしています。ISM製造業景況指数の上昇が再び確認できれば、金利上昇→円安の流れが期待できるのですが、すでに投機筋の円売りポジションが積み上がり過ぎており、1ドル=113円を突破して円安が進む状況でもないようです。一方、このまま悪化が続けば大変です。米長期金利のモミ合い下放れ(低下)に注意が必要だからです。ドル/円は10月16日の安値(111.64円)をすでに下回ってしまっているため、ここから円売りポジションが円買いに巻き戻されれば、110円割れまではあっさりと進みそうです。そうなると、日経平均は上記でお話した2つの動きのうち、後者のパターンになることが予想されます。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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