12月はイベントがたくさんあります。今晩発表される米11月ISM製造業景況指数や週末の米11月雇用統計などの米経済指標、4日のイタリアでの国民投票、8日の欧州中央銀行(ECB)理事会、そして13日-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と続きます。
株式市場にしても、為替市場にしても、上記のイベントのいずれかをきっかけに、今の相場基調が変わる可能性が高いので、どれもこれも重要です。
ドル/円相場は6日-8日あたりに基調に変化が起きやすい日柄を迎えます。それまで円安基調が続くのか、そこまで円高方向へ調整が起きるのかはわかりません。ドル/円相場が直近付けた高値が1ドル=113.90円。それを上回る円安になると116円前後まで強いフシはないように思っていますが、あと1週間で果たしてそこまではどうだろうか、といった感じもします。ただ、11月28日に発表された11月25日現在の投機筋による差し引きの円買いポジションは1万900枚。円売りにつながる円買いポジションの方が依然として多く残っているのは確かです。日本株もこの3年間、12月上旬で頭打ちになってきた経緯があります。今年も足元の上昇スピードだと、株高・円安局面は6日-8日あたりで一服する可能性が高いかもしれません。

さて、史上最高値更新が続く、米国市場のダウ平均とナスダック総合指数(以下、ナスダック)なのですが、1995年以降の長期チャートなどをみると、大きな違いがあるのはご存知でしょうか。図表1をご覧になり両者を見比べた場合、2008年に起きたリーマンショック以降、同じように上昇してきたわけですが、ナスダックは2000年のITバブル当時の高値を上抜けたばかり。一方、ダウ平均は直前の高値であった2007年高値を上回ってから、すでに35%程度上昇しています。つまり、今後の上値余地を考えた場合、過去に経験した株価のゾーンから新たなゾーンに入ったばかりのナスダックの方が上値余地は大きいといえます。これは今の米国市場がある意味、物色が変化する分岐点に差し掛かっていることを示唆しているかもしれません。未知のゾーンで何が起きるかはわかりませんが、ヒントはあります。以下に記してみました。

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図表2をご覧ください。ナスダックとそのサブ指数である、ナスダックバイオテクノロジー指数とナスダック銀行株指数、そして三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)のチャートです。ナスダックがIT相場で高値を付けた2000年2月を起点に指数化したグラフです(三菱UFJは2001年4月を起点に100)。2008年以降でナスダックの上昇をけん引してきたのは、ナスダック上場銘柄のなかでもバイオテック株や銀行株です。
一方、この11月に何が起きているかといいますと、米金利上昇によって金融株全般が上昇しています。ナスダック銀行株指数は今月の終値で2006年12月の高値を上抜ける可能性大で、上抜けると新たなゾーンに入っていきます。調整が続き需給が悪化しているバイオテック株よりも、銀行株がナスダックをけん引していく存在になりえるということです。

2003年以降、日本の銀行株は米国の銀行株と同様に2006年まで上昇しましたが、日本の銀行株は今もなお調整が続いています。2006年の高値を今月にも上抜きそうな米国の銀行株に比べると、まだ2006年の高値までにかなり距離があります。が、米国の銀行株が新ゾーン入りで一段と上昇を強めていく場合、日本の銀行株にとって強力な支援材料になるかどうか、キャッチアップしていけるかどうかです。仮に、米国の銀行株が上昇を引っ張ってくれるとしても、日本の銀行株は昨年の高値が高いハードルになります。ただ、そこを上抜けることができれば、長期底入れパターンが完成します。2003年以降の上昇パターン再来もありえる、個人的にはそう思います。だとしたら、今の銀行株の上昇は始まったばかりだということになります。

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東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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