東京株式市場は米国株式が不安定に推移するなかでも、為替市場でドル/円相場が1ドル=100円付近をサポートにできている以上、大きくリスク回避に傾くことはないとみています。下落する場面では日銀によるTOPIX型ETFへの買いが入ることが心理的な支えになります。ただし、ダウ平均が1万8,500ドルを明確に上回るか、1万8,000ドルを下回るかなどの方向性がみえてこなければ、日本株にも大きな変動は期待薄でしょう。

一方、10-12月はアノマリーを通じて、日米株式への上昇期待が強くなる時期でもあります。米国企業が7-9月期の決算を発表する10月中旬以降の米国株は上昇することが多い、というアノマリーが期待感を高める最初の要因です。なので、それに応えることができる決算内容になるかがポイントとなります。

足元のNY原油先物の上昇が続けば、欧州を経由するオイルマネーなどからの日本株への資金流入は多少あるにしても、特に海外投資家が日本株に目が向くかどうかのポイントは10月後半から始まる国内企業の業績動向です。もうひとつは、ドル/円相場の動向です。企業業績があまりパッとしないのは何となく感じていますが、発表期間中に円安方向に動き出せば、パッとしない業績を織り込み、期待感に変わります。10月相場に入り海外投資家からの売りが止まるという根拠はないですが、売り続けているため買い余力は着実に増加していることでしょう。

10月3日、9月調査の日銀短観が発表されました。大企業製造業DIや先行きDIは6月から横ばい。お察しの通り、サプライズでも何でもない結果に市場は無反応でした。
問題は先ほどの業績動向にも絡んでくるのですが、企業が想定する為替レートです。ドル/円の想定レートは1ドル=107.92円と依然として実勢レートよりも円安水準。想定為替レートが円高方向に修正されたことで、収益計画も前回から下方修正されましたが、普通に考えても業績の一段の下方修正余地は残るかたちになりました。

でも、株価はネガティブな反応は示しませんでした。ドル/円の急速な円安反転を見込んでいるのでしょうか。確かに、ドル/円は5月末あたりから上値を切り下げ、下値は6月下旬頃から1ドル=100円レベルで下げ渋りをみせています。チャート分析では「三角もち合い(下降三角形)」になっているわけですが、見た目でいくと明らかに三角もち合い下放れの円高を見込むことができそうなパターンです。が、少し待ってください、筆者にいわせるとそれは逆の解釈が必要なのかもしれないと思っています。市場は大勢が思っている方向(円高?)には大きく動きません。大勢が思っている方向とは逆に動くから、逆方向(円安?)にはしっぺ返しのように大きく動くことが多いのです。仮に本当にそうなった場合、1ドル=105円程度までは戻りは早いと思います。

日経平均は25日線(16,737円、10/4現在)と75日線(16,380円、同)の間でもみ合いが続いています。しかし、TOPIXは25日線(1332.59ポイント、同)を上回っており、日経平均に比べ9月5日高値(英国のEU離脱が決定してから一番高い水準)に対して高位置をキープしています。相場全体が上向けば、相対的にはTOPIXが先行して9月5日高値(1357.41ポイント)をクリアする展開が予想されますが、日経平均も後追いして9月5日高値(17,156円)を超えられるかが、相場全体の上昇持続力のカギとなります。

9月の月間ベースでは、日経平均とTOPIXは反落し、月足のローソク足では3カ月ぶりの陰線となりました。しかし、筆者はあることに気づきました。日銀のお陰といっても過言ではありませんが、2012年8月からの3カ月間、2014年11月からの3カ月間と同じく、TOPIXが9月で「三点同時」になったことです。「三点同時」とは、終値が3カ月間、同じ価格が続くこと。2012年、2014年のケースは、そのあと大幅高となりました。今年の7月は1322.74ポイント、8月は1329.54ポイント、9月は1322.78ポイントといったように完全に一致したわけではないですが、こんなに3カ月間が近いのもまれ。10月以降の相場に期待できなくもないというわけなのです。

さて、10月4日は「投資の日」でした。「投資の日」ができた1996年から昨年までの20年間、「投資の日」あるいは前営業日から翌年3月末までのTOPIXの勝率をみると12勝8敗と騒ぐほど高いわけではありません。ただ、直近10年間でみると、7勝3敗となるのですが、負けのうちの2回が2007年と2008年の話。金融危機のあった影響が色濃く出たためと割り切れば、この10年間のパフォーマンスは決して悪くありません。「Buy in October」はやってみる価値がありそうですよ。 20161006_DZH_graph01.JPG

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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