昨日(02日)、ドル/円は一時125.03円まで上値を伸ばす場面があったものの、125円台での滞在時間は非常に短く、大きな節目にトライしたことの達成感もあって、ほどなく失速する展開となりました。同日は、欧州時間にECB総裁や独仏首脳、IMF専務理事、欧州委員らがベルリンで一堂に会し、ギリシャ問題について協議する予定であったため、対ユーロでのドル買いを進めにくい状況にあったことも付記しておかねばなりません。
実際、2日の15時過ぎ(日本時間)あたりからユーロ/ドルは徐々に動意づき始め、「ギリシャ政府に提示する支援条件で国際債権団が合意に至った」などの報道が一部でなされるなか、市場における合意への期待の高まりからユーロドルが一時1.1194ドルまで大きく上値を伸ばす場面もありました。
結局、現地時間の深夜まで続けられた2日の会議で具体策はまとまらず、なおも先行きは不透明であるものの、今しばらくユーロに対して積極的な売りを仕掛けにくい状況は続くものと思われます。果たして、当面のユーロ/ドルがどの程度までの戻りを試すこととなるのか、今後のドルの行方を予想するうえでも大いに気になるところです。
下図に見るように、ユーロ/ドルは今年の3月半ば以降、緩やかな上昇チャネルを形成しており、5月15日に一旦チャネル上辺に到達した後、反落して5月27日には4月13日安値を通るチャネル下辺の水準まで下押すこととなりました。その後も、このチャネル下辺はユーロ/ドルの下値支持役として機能しており、昨日は目先的の上値抵抗となっていた一目均衡表の日足「雲」上限を上抜け、次いで89日移動平均線(89日線)をも一気に上抜けるという強気の展開になっています。
今後注目しておきたいのは、まず昨日の上昇で一時的にも上抜けることとなった21日移動平均線(21日線)を終値ベースでもしっかりと上抜けてくるかどうかという点です。仮に同線を明確に上抜けてきたとしても、その上方に控える1.1200-1.1500ドルあたりのゾーンというのは、今年の1月下旬以降、何度もユーロ/ドルがもみ合ったところであることから、どうしても上値が重くなりやすくなるものと思われます。
一つ興味深いのは、昨日の価格急騰によって日足の「遅行線」がギリギリのところで日々線を下抜けずに、一旦グッと上方に持ち上がったことです。今後、前述したゾーンが上値の重石になるならば、いずれ日足の「遅行線」は日々線を下抜けてくることとなり、そうなれば一気にユーロ/ドルの弱気ムードが強まることとなるでしょう。
ユーロ圏の域内景気は足下で僅かながらも改善の兆しを見せ始めていますが、ユーロ/ドル相場が前述のゾーンが位置する水準まで戻ってしまうと、ECBが3月からスタートさせた債券購入=量的緩和の効果が一気に薄れ、たちまち景気回復の足取りは著しく鈍ってしまいます。そうなった場合には、再びECBによるユーロ安への誘導が口先加入などによって試みられる可能性も高く、結局のところユーロ/ドルの上値は自ずと限られる、つまり対ユーロでのドルの下値も自ずと限られるということになるものと思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役