遅行線というのは一目均衡表を構成する5本の線のうちでかなり重要な線です。ただ、非常に簡単なテクニックで、当日の終値を当日を含めて26日前に遅行させるだけです。今日の7月2日の株価の遅行線は5月28日の位置にあるといった具合に。
 そうやって、日々つないでいくと、ビジュアル的には株価に遅れた線があとから同じ波動でついてきているように見えますね。"株価は所詮過去の動き、いくら分析しても将来のことはわからない"といった人には、より複雑な印象を与えてしまうかもしれません。株価といった過去に形成されたものを26日前にさらに遡って指標にするわけですから、なおさらだと思います。しかし、私にとっては非常に重要なもので、日柄、上値メド、下値メドなどを予測するのに日々活用しています。

 シンプルな使い方としては、遅行線とその当時の株価の位置を比べ、遅行線が株価よりも上の位置にいれば相場は強い。下の位置にいれば相場は弱いと判断します。
 何故か?あまり深く考える必要は無いと思いますが、お気付きになられた方もいると思われます。遅行線は現在の株価水準を26日前のずらしたものですから、遅行線が26日前の株価を上回ってきたということは、皆様おなじみの25日移動平均線が足元上昇基調になりつつある、といった見方につながるわけです。
 その点を踏まえて、現在の日経平均の遅行線と26日前の株価の関係を見てみましょう。位置関係としては遅行線が当時の株価を上回っている状況にありますが、そろそろ接触するタイミングであるのがわかると思います。同じような状況に直面している個別株も少なくありません。
 先ほども指摘しましたが、遅行線が株価の下の位置に潜り込んでしまうと、均衡表上では弱気のシグナルが一つ発生することにもなります。当然ながら下に潜り込んだあと、直ぐに上に抜け出すパターンもありますが・・・。それはそれとして、現在正念場にあるところです。
 というのは、遅行線の動きというのは当日の株価の動きそのものでありますが、逆に遅行線の動きが当日の株価の動きを制約するケースもあります。つまり、遅行線という現在株価の鏡のような存在が、自ら能動的な動きをするということです。
 実践的にいいますと、株価の動きがどうも上値が重く、ある一定の水準まで上昇したら、反落してしまうといったケース。現在しか見ていないために判明しなかった上値の障害となっているものが、26日前を見ることによって、納得させられるケースがあるのです。例えば、遅行線が当時の基準線や転換線、また雲や株価に上値を抑えられているケースなどです。

 だとすれば、逆に上値メドが予測できますし、遅行線が上から株価に接近してきたときなどは、株価に接触したところから遅行線の反発を想定すれば下値メドも予測できるわけです。
 現在の日経平均も遅行線が株価の上にありますので、株価に接触して反発を予測できるのであれば、つまり株価はまだ上がるということですね。逆に下に突き抜けた場合は調整の可能性が強くなるということ。だから難しい局面であり、正念場にあるということなんですね。

 遅行線の私なりの解釈ですが、飛行物体が崖に衝突しそうになったときは、操縦かんなどを立て直して、衝突を回避しようとするでしょう。飛び立ったあとは最初は元気があるため、崖に衝突する寸前に一気に上に加速する動き(遅行線が反発する動き)もできそうですが、上昇するにしたがって、加速する力がなくなり、ぶつかりやすくなってくる。ぶつかる力が強ければ、崖のなかにくい込むでしょう(遅行線が株価の下に入り込む)。
 何でもそうですが、上に行けば行くほど、それ本来の機能を失うんでしょうね。トレンドラインを下にブレイクする動きもそう。上に行けば行くほど、基準線の上昇に株価がついてこれなくなるケースなども同じ考え方でいいと思いますよ。
 さて、日経平均の遅行線は目先どんな動きをするでしょうか?

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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