このところ本欄では、ドル/円の「上昇チャネル」とユーロ/ドルの「下降チャネル」を注視し続けています。前回更新分の本欄で、ドル/円に関しては「目先、チャネル下辺(1月16日安値と3月18日安値を結ぶライン)を下抜けるかどうかに注目」と述べたわけですが、その後、ほどなくドル/円はチャネル下辺を明確に下抜けることとなりました。

それ以前にドル/円は21日移動平均線(21日線)を明確に下抜けており、そうでなくとも弱含みの展開となっていたところ、そうした流れに拍車をかけるかのように中期的に続いていた上昇チャネルの下辺をも下抜けたわけです。当然、弱気ムードは一層強まることとなります。結局、先週26日には一時的にも一目均衡表の日足「雲」下限まで下押す場面があり、そこでようやく一旦は下げ止まることとなりました。

その後は多少切り返すものの、今度は「以前、下値サポートとして機能していた21日線とチャネル下辺」がともに上値を押さえる格好となっており、なおも一段の下値リスクに対する警戒は怠れない状況にあると言えるでしょう。今のところ、ドル/円の下値を支えているのは89日移動平均線(89日線)と日足「雲」ということになるわけですが、今後はそれらのサポート水準を下抜けるかどうかに注目しておく必要があると思われます。

同時に、日足の「遅行線」が日々線を下抜けるかどうかといった点も注視しておきたいところです。今のところ、日足の遅行線は日々線の上方を這うような格好で推移していますが、数日うちにも下抜けてしまう可能性はあります。振り返ると、今年1月の初旬から半ばごろにかけて日足の遅行線が日々線を下抜けた場面では、直前の高値に比して5円ほどの値幅を伴う調整となりました。

一方で、いまだユーロ/ドルは年初から形成されていると見られる下降チャネル内での推移を続けています。前回更新分の本欄でも述べたように、やはりチャネル上辺あたりでは上値が重くなり、先週26日に一時1.1052ドルまで上値を伸ばす展開となったときも、結局はチャネル上辺に押し戻されるような格好で反落しています。

昨日は、ユーロ/ドルの日足が終値で21日線を下抜けることとなり、目先はもみ合いが続きそうな状況です。今後も21日線と絡み合うような展開がしばらく続くとすれば、現在収縮しはじめているボリンジャ―バンド(21日)のバンド幅が一段と「収縮」し、次に大きく「発散」の動きが生じる=大きく上下に振れる可能性があるため、その点は注視しておく必要があるでしょう。

今週3日には、注目度が高い3月の米雇用統計の結果が発表されます。思えば、1月分と2月分の結果は、ドル/円の水準が一段と切り上がることに大きく貢献しました。少なくとも、非農業部門雇用者数(NFP)や失業率など「ヘッドライン」の結果は、6月利上げの思惑を大いに強めました。しかし、後に行われたFOMCの結果やイエレンFRB議長の講演などからは想定以上にハト派的なニュアンスが感じられています。

よって、3月の米雇用統計の結果がたとえ少々強めであっても、ドルの上値は自ずと限られる可能性があるものと思われます。まして、その結果が少々弱めであったなら、そうでなくとも最近は弱めの米経済指標の発表が相次いでいることもあり、市場の失望はそれなりに大きくなる可能性もあるでしょう。あくまでドルの下値余地は限られると考えられるものの、一応の警戒はしておいた方が賢明であろうと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役