三羽鳥と押さえ込み?何のことかと思われるかもしれませんが、ローソク足の組み合わせの読み名です。酒田手法です。
 さて、日経平均の昨年11月5日高値、今年1月7日高値、3月26日高値を比べてみてどうですか。それぞれ陽線を形成した日なのですが、翌日の足(次線といったりします)との組合わせに着目してください。この二本の組合わせだけで、その後の相場をイメージすることは可能でしょうか。

 実際に絵(チャート)を見ないとわかりづらいのですが、まずは昨年11月高値のパターンです。11月5日は長い陽線で高値引け(終値と高値が同値のこと)。しかし、次線は安くスタートしたあと逆に長い陰線を引いてしまいました。"タスキ足"といいまして、人間の体にタスキをかけたような格好になっているのがおわかりいただけますでしょうか。上げの初動でこの形状となれば、"上げタスキ"になり買いとなるケースもあるのですが、11月のケースのように伸びきったあとに示現したものは警戒。目先の天井と判断できるのです。もちろん、それだけではなく、他のテクニカル指標なども併用してみる必要はありますけど。

 次に、今年1月高値はどうでしょうか。長い陽線ではないですが、上にヒゲを伴った短い陽線になっています。やや高値警戒、上に行くのをためらっている形ですね。次線は安くスタートしたあと長い陰線です。しかも、前日の陽線に比べて長い陰線になりました。
 さて、そこで昨年11月高値と今年1月高値に共通していますが、投資家の心理としてはどうでしょうか。前日の陽線の中でも高値近辺で買った人の気持ちです。昨年11月のケースでは、「上昇して高値引けとなったから、どうせ明日も高いでしょ。」といったところでしょうか。1月のケースは、ビクビクしながら買っているような部分はあると思いますし、かなり上値が重くなってきている銘柄も増えているはずです。また、下の指値も入りやすく、買いやすい局面でもあるでしょう。
 そして、次線の陰線ですよ。「やってしまった、いきなり損かよ~」、そんなところだと思います。その次も陰線が続いています。
 1月のケースではさらに陰線が続き、俗にいう「三羽鳥」です。三羽鳥は一か月以上の上昇が続いたあと、陰線が三本連続する形です。厳密にはその三本はツタイながら連続しなければいけません。

 それはいいとしまして、3月26日の陽線からあとに続いた三本連続の陰線はどうでしょうか。三羽鳥なら売りじゃないですか、といいたいところですが全く違うのです。
 これも私の拡大解釈になりますが、「押さえ込み」という形で「三羽鳥」とは売買の判断が逆になるのです。押さえ込みの定義的なものは、立ち上がった相場からさらにマドを開けて上昇したあと、そこから陰線で3本連続するケースです。さらに教科書の解説などでは前日の陽線一本に連続した陰線が収まるように書かれていますが、実際に3月27日から続く陰線ははるかに前日の陽線を下回っています。私は拡大解釈でこのようなケースでも「押さえ込み」といっています。
 整理しますと、三羽鳥の一本目の陰線の出方は前日の陽線の中から始まる。押さえ込みの一本目の陰線の出方は前日の陽線の上から始まる。という感覚でしょうか。感覚という表現を使うのは、見た感じが相場観としては何よりも重要だからです。

 一本目の陰線が決め手です。昨年11月や今年1月のケースでは最後の陽線で買った人はほとんど利食いが出来ない状況が続いた、あるいは続くことになります。明日も高いだろうで買った人が、翌日の急激な下げで身動きがとれなくなってしまっている状態と考えて下さい。でも、やばいと一回思った人は少し戻ると怖くて売ってしまうんですね。だから、思ったほど戻らない。結果的に下げ続けるということが多いのです。

 でも、3月27日の陰線はどうでしょう。上にヒゲをつけて陰線。終わってみれば陽線の上からフタで押さえ込むような形状になっています。でも、最後の陽線で買った人でも一旦売ることは出来るし、そこからの下落もジリジリの下げですから、売りたい人は売れるわけです。経験あると思いますが、10万円の利益と皮算用していたやつが、結局5万円しか取れなかったといった局面でしょう。そうしているうちに早売りする人がいなくなり、三本目の陰線でようやく止まるといった感じでしょうか。
 そして、急速に戻す。売った値段よりも上昇する。「持ってればよかった~」、
我慢できずにまた買ってしまう。儲かった株ですから買いやすいはずです。でも、買い値は早売りした値よりも高くなるんですよ。そんな経験もあるのではないでしょうか。だから、「押さえ込み」は押し目買いで反発するパターンになりやすいのでしょう。ただし、陰線三本目が必ず押し目のポイントになるとは限りません。戻したものの、より下押す局面を経て、ようやく反発するケースもあります。あくまでも、「三羽鳥」と違ってズルズル下げ続ける相場にはなりにくいということです。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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