メジャーなテクニカル指標に移動平均線があります。短期の移動平均線が長期の移動平均線を上回ることを"ゴールデンクロス"といいますが、単に上回るにしても、両線が上昇基調であるとより買いシグナルとしての信頼性が高まります。
 足元の日経平均も5日移動平均線がより長期の25日移動平均線を上回り、続いて18日には5日移動平均線がより長期の75日移動平均線をも上回る展開となってきました。
 ところで、日経平均は17日に長い陽線を一本立て75日移動平均線を上回りました。今度は株価が上回ったケースです。終値ベースで75日移動平均線を上回るのは、1月7日以来のこと。ただ、少し今回と違いがあるのですが、75日移動平均線の下向きの角度が当時は強かったことです。よって、当時は翌日からは見事に下げに転換していますが、今回はその下向き角度も緩やか、というかほぼ横ばいです。横ばいや上昇基調の移動平均線を株価が上回ったあとは、比較的堅調に推移するケースが多いのですが、下向きの移動平均線に株価がぶつかったら、高い確率で上値を抑えられるというふうに考えても、そうそう外すことはないでしょう。見た目で判断できる非常に簡単で便利な方向です。

 移動平均線を使った有名な手法、グランビルの法則の一番最初に出てくる理屈です。移動平均線が下降を続けた後に、横ばいもしくは上向きかけている状態で、価格が移動平均線を上抜いた時は買いですよ、というやつです。わざわざ、横ばいもしくは上向きかけている状態で、・・・と条件が付いているでしょう。基本的に移動平均線は傾きを見る指標なので、上昇基調ならば買い継続、下落基調であれば売り継続と考えてもいいと思います。それだけ傾きが重要な指標なんですね。
 また、移動平均線は算出期間が短いほど株価の値動きに敏感であり、騙しも多い。逆に期間を長期にするほど株価の値動きに鈍感になり、売買シグナルのタイミングが遅れるという特徴があります。一本の単線だけ(25日移動平均線ならばそれだけでという意味)で売買ポイントを見極めることが難しいのが私に言わせれば短所でしょうか。

 次に、中値という概念はいかがでしょうか。例えば、"10日の移動平均線"というのは直近10日間の株価の合計を10で割ると出てくる数字です。一方、"10日間の中値"というともっと簡単ですね。10日間のうちの高値と安値を足して2で割り算してやると、中間値、中値が出てきます。皆様ご存知のように中値の概念は"一目均衡表"で使われています。基準線や転換線の計算方法、先行スパン(雲を形成する線)のとり方、さらには値幅予測の考え方など。
 ここであえてとり上げる必要もないのですが、基準線は直近26日間の高値と安値の中値です。転換線は直近9日間の高値と安値の中値です。そこで、転換線と基準線を先述した10日移動平均線や25日移動平均線と比べるとどうでしょうか。
 転換線(9日間の中値)と10日移動平均線、基準線(26日間の中値)と25日移動平均線を重ねて、遠目で見てみると同じような動きや方向性が描けるのですが、移動平均線は曲線なのに対して、転換線や基準線はところどころで屈折のある線になります。
 この線にある屈折ポイントはグラフにすると非常にわかりやすく、売買ポイントにもなりえるのです。要するに、中値の変化するタイミングが売買ポイントとして使えることもあるということです。

 中値にはどのような意味があるのでしょうか。以前、お話したことがありますが、為替相場などでは中値がよく使われます。その日のうちでもっとも出来高が集中したと思われる価格です。現物株式や先物取引などでもそのような傾向があります。特に、先物取引のデイトレ手法として使われるプロファイル分析というテクニカル手法があります。一日の値動きのなかでどの価格帯に出来高が集中(取引が集中)していたのかを見るものですが、日経平均先物を3年程度の期間で検証してみても、大方は一日の値幅の中心価格帯で出来高が集中するタイプのものになってしまいます。朝から大引けにかけて一本調子で上昇していくようなタイプの相場は含まれません。
 つまり、価格情報として中値は非常に重要なものになるわけです。
 中値を用いる転換線や基準線が上値抵抗や下値支持になりやすいイメージを持っていただけたと思います。出来高が多かった価格帯まで株価が上昇すると上値が抑えられるし、出来高が多い価格帯まで株価が下がると下げ止まりやすいですよね。ですから、その転換線や基準線が横ばいから上昇に転じる屈折ポイントは出来高が集中した価格帯が上昇する(上値抵抗が上昇し、下値支持が上昇する)ということなので、株価はより強くなる可能性があり、逆に転換線や基準線が横ばいから下落に転じる屈折ポイントは出来高が集中した価格帯が下落するということなので、株価はより弱くなる可能性があるということです。
東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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