日経平均は堅調な展開が続いていますが、見方によっては「上値が重い」と言われる方もいらっしゃいます。私もマーケットコメントを書くときに「上値が重い」という表現を良く使うのですが、おかしいなぁ、と思うときがあります。「上値が重い」といっても、現在の株価の位置ですと当たり前じゃないですか!年初からのこれだけ大幅な下落した後の戻り過程なわけですから、当然売りは出てきますよね。それが出ながら下がらないんですから、10月安値以降の株価の動きとしてみれば「堅調」でしょう。主力の国際優良株が弱いからそう見えるのか、やはりそのあたりが弱いと市場心理が改善しません。それはわかりますけど、100年に一度といわれる波乱相場のなかで、そろそろ自分を含めて発想自体を変える必要はありますね。

 昨晩の米国市場は下げましたけど、11月安値以降の米株指数の動きを見ると、高値圏で堅調な展開が続いているではないですか。東京市場では円高進行や、それに伴う業績下ブレ懸念から主力の輸出関連株が軟調ですが、円高メリット株や、時価総額の大きい金融、通信、小売などの主力内需株には買いが継続しています。米株堅調、上がるのか?だったら東京も堅調?でも、主力の国際優良株買えない、それ以外はとなると、内需の時価総額の大きい主力株を買って代替にしないといけません。実際に大きな資金がそうやっているかどうかはわかりませんが、発想はいたって簡単!個人であれ、機関投資家であれ同じです。でも、相対的にメガバンク株や通信、小売が強い要因、買いの力によって、株価ボードが赤くなる(上昇している)のは、もっと重要なところにあると考えます。

 それは、以前このコーナーでも取り上げたことがあると思いますが、過去に辿ってきた株価の動きが主な要因です。今上昇しているセクターは2003年安値から2007年7月高値までの大きな上昇トレンドの中で、相対的に買われていなかったもの、あるいは相対的に早く高値を付けたセクターで、大きな循環物色の流れできているのでしょう。この環境のなか、それ以外で銀行株の堅調な理由を述べることができますでしょうか。
 例えば、銀行セクターは2006年4月、TOPIXや他のセクターに先駆して高値を付けたセクターです。それ以降のTOPIXの高値更新過程でも銀行セクターは下落が続きました。小売の高値は2006年1月。そして、紙パの高値も2006年3月なのです。一方、鉄鋼や海運、機械などは2007年以降に大天井をつけたセクターです。

 所詮、人間が相場を作りますので、人間の心理、気持ちの切り変わりなど、いろんな要因が混在して、循環物色たるものが存在するのだと思うのですが・・・。表面的には円高メリット、業績悪化懸念に対する消去法的な買われ方をしている、との表現もあるでしょうが、日柄の概念を中心に考えれば現在上昇している銘柄はわかるような気がします。
 アナリストが円高を追い風に、メリット株を採り上げようと、採り上げまいと結果は同じ、注目株に採り上げれば、結果に至るまでの動きは異なるかもしれませんが、最終的には株価自体が持つ能動的な結果になるということではないでしょうか。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ