前回更新分では株価の話題に触れました。ポイントは「日経平均株価の19000円処はダブルボトム完成後の最初の上値目標と考えられ、そのあたりの水準では目先的に上昇一服となりやすい」ということで、そのまま一時調整局面入りとなれば「ドル/円の上値も押さえられやすくなる」という点でした。
実際、日経平均株価は先週6日につけた18979円を直近高値とし、昨日(10日)は一時18577円まで下押し。それでもドル/円は一時122円台に乗せるなど堅調に推移していましたが、欧米時間帯に突入して日経平均先物(3月限)が夜間市場で18500円まで下押すと、ドル/円も一時121円を割り込む場面を垣間見ることとなりました。
ここで、あらためて昨年12月初旬以降のドル/円の動きを整理しておきたいと思います。
下図でも確認できるように、ドル/円は今年2月6日に1月分の米雇用統計の結果が明らかになるまでは、いわゆる「三角保ち合い(トライアングル)」を形成しながらもみ合う展開を続けていました。今年1月の初旬からドル円の上値を押さえていた21日移動平均線(21日線)を日足ロウソクの実体部分で上抜けたのも2月6日でした。
その2月6日以降、ドル/円の日足ロウソクが実体部分で21日線を下抜けたことはこれまでありません。そして、今振り返ればドル/円は「今年1月16日安値と以降の安値を結ぶサポートラインとそれに平行するアウトラインとで形成される『上昇チャネル』内での推移を続けてきた」ということになります。
実際、昨日の高値=122.02円もちょうどチャネル上限の水準に位置していることがわかります。したがって、やはり当面の上値メドは一つにチャネル上限水準ということになるでしょう。少なくとも、来週のFOMCの結果が明らかになるまでは、再びチャネル上限を試す動きとなる可能性もあっておかしくないものと見ます。ただ、昨日のNYダウ平均が再び大幅下落(前日終値比-332ドル)となったように、一方で株価の動きが大いに気になることも事実です。
株価調整の影響がドル/円にも及んだ場合、当面の下値メドはまず21日線です。同線をも割り込めば当然、チャネル下限が次のメドということになるでしょう。繰り返しになりますが、少なくとも来週のFOMCの結果が明らかになるまでは、このチャネル内での値動きが継続する可能性が高いものと思われます。
もちろん、FOMCの結果は誰にもわかりません。目下のところ、市場では「今回のFOMC声明文から『辛抱強くいられる(it can be patient)』の文言か削られ、6月利上げの可能性が一気に高まる」との見方が強まっているようですが、それが必ずしもFRBの方針と一致しているとは限りません。思惑ばかりが先行し、結果的には少々アテが外れて市場は失望といったような状況となれば、やはり一旦はドル売り圧力が強まることとなるでしょう。
米金融政策のベクトルがあくまで利上げ方向であることに変わりはありませんが、初回利上げの時期が6月なのか、はたまた9月なのかによっても今後の展開は大きく違ってくることと思われます。いつにも増して重要なFOMCを控え、その前とその後では戦略を変える必要が生じる可能性もあるものと思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役