さて、株価のトレンドの中には利食い売りや押し目買いが繰り返されています。それが大きくなった時は、中段もみ合いといわれる“継続パターン”に成長しますが、トレンド転換につながった場合には “反転パターン”となります。少し難しい話になりますが、その違いが事前にわかれば、天井なのか、買い乗せなのかがわかりそうですね。
唯一、ヒントになるのが出来高です。例えば、もみ合いの場合はそれには特徴がでますよね。三角形型のもみ合いの場合は出来高は次第に減少傾向となります。ダイヤモンド型のもみ合いの場合は、前半の拡大三角形では出来高は増加傾向となりますが、後半の縮小三角形では減少傾向になります。頭をまん中に両側に肩のある形で表現される三尊天井型は、左肩の上昇クライマックス場面にかけて出来高は最も膨らみます。そして次の下落局面でも出来高はそれほど減少しません。しかし、頭の部分は左肩に比べて出来高は少なくなります。そして、その後の下落からは減少が目立ってきます。三つ山を作るときは、価格の動きだけを観察すると三尊天井型のように見えますが、通常、三尊天井は下落時に出来高は増えません。それが増えていれば、疑い・・・。そうすると、もみ合いと判断できるのです。
要するに、もみ合いのような複雑な型では投資家の心理状況は出来高面の方に強く現れるということです。しかし、出来高分析は価格分析の補完的なものという認識が一般的に強く残っています。それは出来高の増減が投資家の利益と直結しないからです。
出来高分析にはいろんな種類がありますが、私はボリュームレシオ(VR)に注目します。ただ、それを単独では使わず、RSIと併用します。VRは出来高の分析。RSIは株価の分析です。計算方法が同じであるため、単純に両者のスプレット(RSI−VR)だけをみるだけでもいろんなヒントが隠されています。 単純にスプレッドがゼロラインよりも上にある場合は、RSIがVRよりも大きい局面を意味します。逆にスプレッドがゼロラインよりも下にある場合は、VRがRSIよりも大きい局面を意味します。ゼロラインを境目に出来高と価格の力関係に変化が生じると考えます。
ゼロラインは1単位の株価の変動に必要な1単位の出来高量。スプレッドラインは1単位の出来高の発生によって株価がどの程度変動するかという意味におきかえます。それがゼロラインよりも上にある場合では、RSIがVRよりも大きいので株価が上昇しやすい状態。逆にゼロラインを下に抜けてVRがRSIよりも大きくなる局面では、株価の変動に必要となる出来高量が増えるということですから株価は上がりにくい状態に変化するという考え方です。実戦的には戻り売りが多い価格帯に入ることを意味しますね。こういった見方で、その時点のマーケットの大勢的な強弱を考えることができるというわけです。例えば、新日鉄でも過去に辿ってきた株価があるわけで、今後の動きを予測する場合、出来高1に対して株価が1動くかどうかはわかりません。1000万株の商いで10円動く水準もあるし、1億株できないと10円動かない水準もあるということ。そのときの力関係を見ることができます。
そこで、個別銘柄のソニーとトヨタ。この2つの銘柄は日本を代表する国際優良株で、2000年のIT相場の高値以降の動きが異なっている銘柄です。これまでほぼ同じ日柄を経過し同じインデックス採用銘柄でありながら、IT相場の高値を抜いて昨年まで上昇を続けたトヨタに対して、何故ソニーは高値を抜けないのか。それはIT相場を形成する段階における株価とスプレッドラインの動きにも関係がありました。
実はIT相場の高値を形成する過程で、トヨタはRSIがVRを引っ張っていました(RSI>VR)。出来高1の力に対して相対的に株価の上昇が大きかったのです。逆にソニーは初動段階からVRがRSIを上回っていました(RSI<VR)。要するにソニーは上昇時に必要以上の出来高を吸収してしまったために、それ以降の株価の動きに影響を与えうる、戻り売りの要因を蓄積してしまったということなのです。それがソニーの株価上昇が長く続かない1つの要因であったと考えられます。ソニーを中心として、同じ時期に急騰したハイテク株がいまだに他業種と比べてアンダーパフォームなのは、同じ理由ではないでしょうか。
しかし、随分時間が経っています。そろそろIT相場のシコリがなくなってきているのでは、・・・。昨日の大幅下落の中、ソニーやNECのプラスは相場の一点で笑っていたような。
(株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ 東野幸利)
※なお、12月1日より社名が 株式会社 トレーダーズ・アンド・カンパニーから変更となりました。
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