一般的に株式の売買タイミングを計る時、相場の分析をする時もそうだと思いますが、株価の動きだけを優先しがちになる傾向があると思います。出来高はなんとなくしかみない、一応見るけれど、出来高自体を詳細に分析することはないという人が多いのではないでしょうか。出来高分析を優先したがために失敗した例もあると思います。株価が明らかに強気のシグナルを出しているのに出来高が増えないから、参入できず結果的にトレンドに乗ることができなかったケースなど。しかし、株は需給関係(売りが多いのか、買いが多いのか)によって、その時点での価格が決まりますので、やはり出来高を分析するということは株価を予測する一つの有効な手段になるのです。

ただ、同じ値段の株価でも一日通じて10万株しかできない株と100万株できる株とは意味合いは違うと思いますし、同じ100万株でも前日の50万株から増えたのか、200万株から減ったのか、随分潜在的な需給要因は違います。出来高分析はただ出来高が多い、少ないということではなくて、その変化を分析するということに意味があるのです。出来高は株価のようにそれ自体にバリュエーションというか、価値はありません。変化を分析するしかないのです。

そこで、出来高と株価の関係を説明する場合“出来高は株価に先行する”という言葉がありますが、ほんとうでしょうか。また、どのような時に出来高が株価に先行するのか、逆に株価が出来高に先行することはないのでしょうか。結論は“出来高は株価に先行する”というのは、相場のある局面では当たっているけれども、そうでない時もある。ケース・バイ・ケースですね。当たっているという部分では、株価が下落から上昇局面に移行する局面では出来高は増えますし、長期的なボックス圏から抜け出すパターン、長期的な低迷相場から出来高が急増して大きな陽線が一本立つケース、何ヶ月ぶり、何年ぶり、また何分前の高値を抜く直前にも出来高は急増すると思います。今度は逆のケースを考えて見ましょう。株価が上昇したから出来高が増える、株価が下落したから出来高が減少する―なんかがそうですね。「高いから買う、下げているから買いたくない、売りたくない」というような場合で、出来高が先行しているとは言えないですね。昨日まで割高と思っていても、当日株価が上昇すると一瞬にして昨日までの判断はどこかにいってしまって、逆に「もっと上がるのではないか」という期待にかわる。あるいは、昨日まで割安と思っていた株でも当日株価が下落すると、昨日までの自分の評価に自信がもてなくなって、出している買い指値注文を取り消してしまうとか、皆さん経験ありますよね。この場合は明らかに株価の動きが出来高面に影響を与えたケースであって、“株価は出来高に先行する”なのです。

「出来高が全然増えないね〜」「相場上昇したけど商いが盛り上がらない」、なんて直近よく聞いたりしませんか。出来高や売買代金が増えなくて当然ですよ。こんな疑心暗鬼の中、反発した瞬間から出来高が増えるはずがないんですから。