どこまで上がるのでしょうか。金融株ではありません。鉄鋼、化学、非鉄、商社、造船、海運などのセクターのことです。“もうはまだなり”の世界に入ってきましたね。少し早いでしょうが、来年に向けてはどうなるのでしょうか。ちなみに、私は1991年に証券界に新入社員として飛び込んでまいりましたので、俗に言う“バブル相場”を知りません。私を含めてそうですが、1990年以降に証券界に入った人間は下げ相場の中で育ってきたわけで、上げ相場は知らないのです。当時、お客様の証券マンに対するイメージは良いわけがなく、入社した後の外交では突然、頭からお茶を流されたり、スリッパが飛んできたりしながらも(16年前の話なのですが、スリッパの色は緑で今も忘れません)、下げ相場の中でいろんなことを学びました。
下げ相場の中でも、IT相場は強烈に印象に残っています。あの時はハイテク・通信・インターネット株中心の相場展開が続きました。それらしい銘柄の月足を見ると真ん中に“大天井を作った形跡”一本高い山が形成されています。その高値もいつか破られるのでしょうか。ハイテク・通信・インターネット株と鉄鋼、化学、非鉄、商社、造船、海運株などを比べた場合、2003年4月の日経平均が安値を付けた時点からは、株価のパフォーマンスは明らかに後者が勝っていると思います。なぜでしょうか。堅調な外需や商品市況を背景に業績の好調が続いているから・・・、となるのですが、それだけでしょうか。
長期的観点から考えればわかりやすいのですが、IT相場ではハイテク・通信・インターネット株が主導して上げ相場をつくりましたが、今は逆に鉄鋼、化学、非鉄、商社、造船、海運セクターが先導役になっています。この手のセクターは80年代の相場で大きく上昇しました。その後、バブルが崩壊して長期間の低迷を強いられたのですが、その間、経営者は何もしなかったのでしょうか、何もしなかったわけがありません。過剰設備を廃棄し、余分なコストは大幅にカットし、最後に過剰人員を削減したわけです。投資家も株価の低迷が続く間、売る人は早々に売って、持ち続けている人はまだ持っていると思いますが、途中のIT相場で時の株に買い換えたケースもあるのではないかと思います。そのような状況が15年くらい続くと、株はどうなるでしょう。もう、ジリジリと上昇していくしかないのです。
一方で、ハイテク・通信・インターネット株は、時折上昇する場面はありますが長続きしません。IT相場からまだ7年程度しか経っていないために日柄調整が済んでいないのでしょうね。3年ほど前に某電機メーカーで働く友人に聞いた話ですが、ITブームの時に採った人員が当時まだ溢れかえっていたそうです。もちろん、現状では相当縮小されていると思いますし、最近ではハイテク産業の中でも共同事業を手掛け始め、不採算事業を他社に売却するような報道が多くなってきたように思います。7年経ってようやく動き出したわけですが、株価の低迷はまだ続きそうです。NTTドコモの昨日の安値更新はそれを暗示しているのではないでしょうか。
ハイテク・通信・インターネット株に順番がまわってくるのは、いつごろになるでしょうか。予測は非常に困難ですが、「100年の歴史を持つ通信網が大変革する“通信の大変革”」に商機があると、NECの社長はコメントしております。それまでは鉄鋼、化学、非鉄、商社、造船、海運などのセクターに関連した企業の株価は、まだ上昇を続けるということですね。ハイテク株へのバトンタッチはまだ先か・・・。
(トレーダーズ・アンド・カンパニー 東野幸利)
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