ここ最近の日経平均株価は、上値の重い展開が続いていました。NYダウやS&P500は高値を更新しているにもかかわらず日本株は大引けまでもちません。今日、某新聞に“日経平均株価は100日移動平均線に2日連続で跳ね返された”と書いてありましたが、全くその通りですね。100日移動平均線に上値を抑えられていました。

しかし、もっと注目すべき点は75日移動平均線です。日経平均株価は10月3日に長い陽線を形成して、75日移動平均線を一気に上抜き、それ以降は一度も同線を下回っていないにもかかわらず、なぜでしょうか。75日移動平均線が下落基調にあることが、株価の上値を重くしていた一つの要因と考えられます。通常、移動平均線を上回っていれば、計算上はその期間中に売買した投資家が含み益になるということで強気継続とされますが、移動平均線が下落基調であると株価がそれを上回っても株価を下から引っ張る力が強くなるため、株価の上昇しようとする力が小さくなるのです。例えば、75日移動平均線であれば、全く同じ株を直近買った人も75日前に買った人も、単純平均であれば同じ平均買いコストになります。しかし、75日間で株価が乱高下していた場合、買いコストは大きく異なっているはずです。

日経平均株価の直近75日間だけの動きを考えるとどうでしょうか。今から75日前の買いコストは6月25日の18080円ですが、8月17日の安値から昨日までの平均買いコストは16350円前後です。投資家心理としては、安い水準で買って含み益が大きい株はなかなか手放しません。一方で、高い水準で買った株は、今か今かと売りのタイミングを計っている状況でしょう。これは個別銘柄でもそうです。例えば、新日鉄やソニー、ホンダなどの株価も75日線がネックになっています。

「75日」というのは、月間に換算しますと、およそ3か月と少しですね。相場の世界では、投資家心理に直結する「3」という数字は非常に重要な数字です。酒田戦法は三兵や三羽烏など三手目を重視し、フィボナッチ級数でも「3」は重要です。“3分クッキング”や“3年B組”などはよく分かりませんが、資格制度もなぜか3段階あるものが多いようです。心理状況としては3か月経っても買い値に戻らないため、痺れをきらして売りたい気分になるのでしょう。よって、一番いいパターンは、そういう気持ちになる人がいなくなる水準、つまり75日間で一番古い日の株価が現在の株価と同水準になるまで待つ事です。その時点から75日移動平均線は上昇に転じます。そうすると、今まで株価を下から引っ張っていた力が、今度は押し上げる力に変わるのです。

ここで読者の皆様、ハプニングが生じてきました。このメールを書いている途中から、日経平均株価が200日移動平均線を超える勢いで上昇してきました。上値が重い理由を記述していたのですが、上値が軽くなってきました。こんなケースもあるということです。

ただ、移動平均線をこのような見方で観察していくとまた面白いと思いますし、もちろん個別銘柄や他の日数を使った移動平均線でも同様の考え方で使えます。移動平均線を見る際の最も重要な点はその傾きです。下落基調であれば横ばいや上向きになるタイミングが重要です。そのタイミングをある程度推測することができれば、投資パフォーマンスはより向上するのではないかと思います。
(トレーダーズ・アンド・カンパニー 東野幸利)

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