米国株の戻りが鮮明である。ちょうど1か月前につけた高値からの下げ幅に対して、ダウ平均、S&P500は半値戻しを達成している。ナスダック総合に至ってはフィボナッチの76.4%戻し、実に4分の3以上を埋め戻した格好だ。

米国市場が全値を戻せるか、それは市場全体の動きを表すS&P500が鍵を握る。現在S&P500は重要なポイントに差し掛かっている。200日移動平均に下ヒゲがタッチしたところで切り返し、6日連続陽線で6連騰してきたが25日移動平均に頭を抑えられた。その後も取引時間中に25日移動平均の水準を試すも抜けなかった。先週末の金曜日は大幅高となったがちょうど25日移動平均の水準で終えている。3度目のトライで25日線をすっきり抜けるか重要なところだ。

もうひとつテクニカル的な節目として意識されるのが一目均衡表の雲の上限。S&P500の株価はこの雲の上限にも接近している。25日線と雲の上限を同時に上抜ければ上値の視界が一気に広がろう。

それに比べて日本株の戻りの鈍さが目立つ。ざっくり言って1月の高値2万4000円から2万1000円割れまで3,000円あまり下げ、2万2000円台に戻れないというのは3分の1戻しもできていない。まずは早急に2万2000円台を固めたうえで、半値戻しの水準である2万2500円の節目を試しにいくことが当面のターゲットである。

今週の最大の注目はパウエルFRB議長のハンフリー・ホーキンス・テストモニーだ。従来予定されていた28日から1日前倒しされ、27日に実施される。パウエル議長は当然のようにバイアスのかからない議会証言ならびに答弁に努めると思われる。市場が荒れたあとだけになおさらだろう。FRBにとっての至上命題は金融政策の正常化を進めることだが、それには市場の安定が絶対条件。市場をいたずらに動揺させないように、「タカ派的」とも「ハト派的」ともとられないように中立的な態度で臨むと思われる。

しかし問題は、市場のほうが勝手に動くということがあることだ。市場が先に勝手に動いて、パウエル議長の発言が「タカ派的」だった(あるいは「ハト派的」だった)と後講釈的な説明がなされて、それが市場のコンセンサスになっていくということは往々にしてある。そういうことも「相場の一部」だと思って臨みたい。

次の重要日は3月1日。リスク・パリティ戦略を採用する機関投資家の月次リバランスで、3月1日に株式のエクスポージャーを落とすためにポジション調整売りが出るのではないかとの観測が一部にある。しかし、そんな予め分かっているリスクイベントで相場が下げるほど日本株市場はプリミティブな市場ではないと信じたい。一方で、毎月の第1営業が上昇するというアノマリーは20カ月連続しており、それもどうかと思う。月初に上げるのが分かっているなら、月末に売る人はいないはずであるが、実際には月末は下げたり上がったりだ。アノマリーというか特殊要因が交錯する3月1日には注目したい。

最後に3月4日はイタリアの総選挙が実施される。波乱なしがメインシナリオだが、「レイ・ダリオ氏が創業した世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツは、イタリアの総選挙を3月4日に控えて、イタリアの銀行や保険会社関連の資産が下落する方向に賭ける投資を増やしている」(Bloomberg News)と報じられている。ブリッジウォーターが単純なアウトライトのショートを持っているとは思えない(もっと複雑なヘッジポジションになっているはずであろう)が、いずれにせよ大きなベットがかかるイベントだけに、3月4日のイタリア総選挙の前後の波乱には備えておきたい。週末には警戒感から様子見機運が広がりやすいだろう。

日経平均の今週の予想レンジは2万1500円~2万2500円としたい。