今週の株式市場は上値の重い展開となりそうだ。戻ったところは利益確定の売りに頭を抑えられるだろう。根拠はロシアゲート疑惑に対する警戒感が再度高まること。上院情報特別委員会は19日、前FBI長官のコミー氏が公聴会に出席して、一連のトランプ政権のロシア疑惑について証言することに同意した、と発表した。日程はメモリアルデー(来週の月曜日)明けのどこかで調整しているとのことだから、雇用統計の発表前のタイミングか。その雇用統計は、6月のFOMCで利上げを決める重要な指標となる。コミー氏の公聴会証言、雇用統計を控えて来週は様子見一色だろうから、投資家の心理としてはメモリアルデーの3連休の前にポジション調整を済ませておこうと考えるだろう。すなわち、今週の上値は絶好の手仕舞い売りのチャンスと捉えられる。

今週の大きな注目は、トランプ政権が23日に議会に提出する予定の新年度の予算教書であったはずである。米行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長は、ワシントンでの講演で2018会計年度の予算教書を23日に議会に提出することを明らかにした。「あったはずである」と書いたのは、本来ならそうだが、実際は違うということである。言うまでもなく、ロシアゲート疑惑でトランプ大統領の弾劾まで取りざたされる現状にあっては、遅れに遅れた予算教書がいまさら出されても、相場の材料にはならないだろう。中身にしても3月に発表済みの予算編成の基本方針と大きな違いはなく新味に欠けると思われる。端的に言えば、いくらトランプ政権が大型減税などを主張したところで、ロシアゲート疑惑が片付かなければ議会の協力が得られず、実現の目途が立たないからだ。

そのほかの重要イベントとしては24日の米連邦公開市場委員会 (FOMC) 議事録(5/2-3日開催分)の公表がある。5月の声明文では次回利上げに向けた示唆はなかったが、1-3月期の米国の減速が一時的なものとの判断を示した。その背景が議事録で明らかになるか注目される。25日にはOPEC(石油輸出国機構)総会が開かれる。減産継続で原油価格が上昇すれば、リスクオン地合いに傾く材料になる。ただし、減産継続は織り込み済みで、そうなる可能性は薄いだろう。

イランの大統領選で現職の穏健派ハッサン・ロウハニ師が再選を果たしたことは、ひとまず安心材料。しかし、国際情勢を巡る緊張は依然として高い。そんななか、トランプ米大統領が就任後初の外国訪問となる中東・欧州歴訪に出かけている。イスラエルでは中東和平問題が主要議題となるが、在イスラエル米大使館のエルサレム移転問題への言及が注目される。ベルギーでは北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席。テロの頻発地域であり、一段と警戒感が高まる。就任後初の外遊という意味は、初めて「アウェー」に出るということだ。イタリアで開かれる主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)まで気が抜けない。いちばん警戒するべきは、外遊先でのトランプ大統領の不穏当な発言かもしれないが。

今週の日経平均の予想レンジは、1万9300円~1万9900円とする。