投資という観点から、来年どのようなリスクがあるか。そんな質問をされました。あるだろう、と思われることはリスクではありません。リスクとは、ないとは思っているが、発生する可能性は少しではあるが一応あり、そしてもし起きたら、ネガティブな影響が大きいもの、ということになります。基本はグレート・ローテーション、即ちドル高・円安・債券安・株高が基調だと思いますが、リスクと私が思うことは2つです。

ひとつは、トランプと共和党が唱える「本国投資法(Homeland Investment Act)」の導入が何かしらの理由で頓挫すること。本国投資法とは、アメリカ企業が海外にもっている資金や利益をアメリカ本国に環流する際に掛ける税金を大幅に下げるもので、2005年にも一旦導入された時には、時の米中央銀行による利上げとも相い重なり、ドル円は一年間で20円ほど円安になりました。今回のトランプ当選直後の急速な円安は、この本国投資法導入に関する連想の影響が大きかったでしょう。もしこの本国投資法の導入が期待と予想を裏切って頓挫すると、一気に15円くらい円高に振れても不思議ではありません。大統領・上院・下院と一気通貫で共和党で押さえている状態なので、期待を裏切られることはないとは思いますが、一定の注意を注いでおくことは必要でしょう。

もうひとつ私がリスクと考えるのは北朝鮮です。日中米露を取り巻く環境は、トランプの登場によって風雲急を告げるような状況ですが、具体的な対話があるにせよないにせよ、お互いにお互いを意識していて、その意味ではコミュニケーションが或る程度存在しているので、様々な牽制行動はあっても、突然有事が発生することはないと思っています。一方北朝鮮は、没交渉です。そして潜水艦からのミサイル発射の実験もしています。トランプ政権には制服組も多く入りますから、コミュニケーションの一切取れない相手が、潜水艦からミサイルという、突然前触れもなく攻撃可能な手段を準備しているという状況を考えると、先制攻撃的な手段を選択するという可能性も、完全にゼロだとは私には思えません。もしそのようなことが起きると、場所柄からも、日本のマーケットに与える影響は突然で、しかも大きいでしょう。

この2つが、来年、念のため、気にしなければならないと私が考えているリスクです。冒頭書いたように、リスクはあるだろうと思われることではなく、むしろないだろうと思われることなので、これらリスクに対するヘッジは今はしません。
しかし、これらリスクが顕在化した時のヘッジの具体的な方法は、予め考え、いつでも、急に、十分に実行可能なように、まぁ消防訓練とでも云いましょうか、頭の体操はして、準備をしておくつもりです。それが私の新年を迎える段取りのひとつです。