前回更新分の本欄で、筆者はドル/円の今後について「21日移動平均線(21日線)が下値サポートとして機能し続けるかどうか」に注目しておきたいと述べました。そして、後にドル/円は21日線を明確に下抜け、一昨日(13日)は一時的にも103円を下回る水準まで値を下げることとなりました。
昨日(14日)から本日(15日)にかけては、ドル/円が大きく値を戻す展開となっているわけですが、今度は以前とは逆に21日線が上値を押さえる存在として意識されやすくなっているということがハッキリと相場から伝わってきます。実のところ、こうしたドル/円の値動きと非常に似通った状態にあるのが、今のユーロ/ドルの値動きなのです。
下の図でも確認できるとおり、ユーロ/ドルは昨年11月26日から年末まで、基本的に21日線に下値を支えられる格好でしばらく推移していました。ところが、年明け2日に21日線を下抜けてからは大きく値を崩し、一目均衡表(日足)の「雲」下限が位置する水準まで一時的にも下押ししました。
この水準には、昨年7月9日安値と11月7日安値を結ぶ中期的なサポートラインも位置していたことから、ほどなくユーロ/ドルは戻り歩調に転じましたが、その行く手はやはり21日線に阻まれて、目下は上値の重い展開を余儀なくされています。まさに「21日線がモノを言う」といった状態にあるわけです。
周知のとおり、外国為替相場の現状を分析し、その行方を予想する際には、よく前出の21日線や89日移動平均線(89日線)が用いられます。それは何故かと言えば、やはり「過去の値動きとの相性が良い」というのが一番に挙げられる理由であろうと思います。株式相場の分析や予想の際に、よく25日移動平均線や75日移動平均線が用いられるのも同じ理由と考えていいでしょう。
また、考えてみれば「21日」というのは、土・日を除いた営業日ベースで約1カ月のことでもあります。つまり、21日線が位置する水準というのは「過去1カ月間の終値の平均値」にあたるわけで、言い換えれば「過去1カ月間に投資家が売買した価格の平均」ということになります。やはり、そういった水準には多くの投資家の様々な思いというものがあるでしょう。
ちなみに「21」や「89」という数字は、多くの投資家にお馴染みの「フィボナッチ数列(=1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233......)」のなかに登場する「フィボナッチ数」でもあります。
このフィボナッチ数列は、かの有名な「黄金分割」をダイナミックに表現したものと言うことができ、最初の2つの数字を除くと、それぞれの数字の前の数字に対する増加率は1.618に無限に近づいて行き、連続する3つの数字の互いの比率は0.618:1:1.618=「フィボナッチ比率」になっています。このフィボナッチ比率と相場の関係に注目した分析手法が多くの専門家や投資家に愛用されていることは言うまでもありません。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役