来週17-18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、ドル/円は5月22日高値の103.73円まで「あともう少し」という水準に迫りながらも(10日は一時103.39円まで上昇)、今のところ一気に年初来高値を更新するには些か材料不足といった状況にある模様です。

本欄の前回更新分では「今現在から年明け2月あたりまでにドル/円の第5波は終了する可能性がある」と述べましたが、それは「米量的緩和(QE)縮小開始のタイミングが今月なのか、それとも来年3月なのかによる」ということになるものと思われます。もちろん、それによって第5波が終了する水準=当面のドル/円の天井も決まってくるものと見られ、それが「103.73円を超えない水準に留まる」のか、それとも本欄の2013年11月20日更新分で想定したように「104円台後半から105円台半ばあたりまで上値を伸ばす」のか、今は非常に興味深い局面を迎えていると言っていいでしょう。

では、ここであらためて海外ヘッジファンドなど投機筋の取組姿勢を示すシカゴ通貨先物市場の取引状況(ポジション)を確認しておきましょう。下の図に見るように、12月3日時点での投機筋による円の売り越しは13万3383枚と、07年7月以来6年4か月ぶりの水準に達しています。つまり、なおも投機筋は大きく円売りにポジションを傾けており、一段のドル/円の上昇に大いに期待しているということになります。

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振り返れば、投機筋による円の「買い越し」が「売り越し」に転じたのは12年10月下旬のことであり、これは同年10月半ばに日本で開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会において日本が世界に円高是正への理解を強く求めたことや、その頃から日本国内で「年内解散」が意識されていたことなどとも大いに関わりがあるものと考えられます。そして実際、12年11月に衆院解散、同年12月に総選挙が行われて安倍政権が発足してからは、現在に至るまでずっと円売り越しの状態が続いています。

今年5月下旬にドル/円が年初来高値=103.73円をつけた当時の円売り越しは10万枚近くで、後に反落して6月半ばに93.79円の安値をつけた当時の円売り越しは6万枚余りに減少していました。つまり、投機筋の円売り越し枚数が4万枚弱の減少となる間にドル/円は約20円も円高方向に振れたということになります。

こうしたことを踏まえて足下の13万枚超の売り越しという水準を考えたとき、言えることは数あります。まず、前述したように目下の水準は「07年7月以来」です。当時を振り返るとドル/円は07年6月に124円台の高値をつけ、反落して以降は大きく値を下げたという事実が想い起こされます。また、目下の円売り越しは5月高値をつけたときの水準を上回っていますが、いまだドル/円は5月高値を上回っていません。つまり、一段のドル高・円安水準には一定の円買い需要があると想像できることになります。

もちろん、過去にあまり例を見ないほど円売り姿勢が強まっているということもでもありますから、当面は一段のドル高・円安水準を目指す可能性が十分にあります。ただ、ひとたび天井をつけて反落した後に、大きく積みあがったドル買い・円売りポジションの巻き戻しが一気に起きれば、それなりにまとまった調整になる可能性もあるということは、頭の片隅においておきたいものと考えます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役