少し振り返っておきますと、本欄の10月16日更新分ではユーロ/ドルのボリンジャーバンド(21日)においてバンドの幅がかつてないほどに縮小している点に注目し、これは「相場がブレイクアウトする前兆ではないか」と述べました。正直、筆者は「下方にブレイクする可能性の方が高い」と考えていましたが、実際には逆で大きく上方にブレイクしました。いずれにしても、あとはセオリー通りで「上方へブレイクしたら買い」が有効という結果になったわけです。

後にユーロ/ドルは1.38320ドルまで上昇(10月25日)し、そこから大きく反落することとなります。実のところ、同水準は11年5月高値(=1.4939ドル)から12年7月安値(=1.2042ドル)までの下落に対する61.8%戻しの水準とピタリ一致しています。この結果を受けて、過去に本欄でも幾度か触れているように、ユーロ/ドルの値動きというのは、ある一定期間の下落(あるいは上昇)に対する「61.8%戻し(あるいは押し)」というレベルを意識して動くことが非常に多いということを再確認することとなりました。

逆に言いますと、今回のような「61.8%戻し」という重要な節目に到達するということは、後に反落する可能性が高いということであり、その実、10月28日以降のユーロ/ドルは大きく値を切り下げることとなりました。今週4日には1.3442ドルまで押し下げる場面があり、これは下の図でも確認できる通り、7月9日安値と9月6日安値を結ぶサポートライン(図中の水色点線)と顔合わせする水準です。なお、本欄の10月16日更新分でも同サポートラインには注目しています。

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このサポートラインは、目下のところ文字通り、ユーロ/ドルの下値を支える格好となっており、昨日(5日)の安値も同水準を下回っていません。また、上図であらためて確認できるように、現在のユーロ/ドルは一目均衡表(日足)の「雲」上限にも下値を支えられる格好となっている模様です。さらに、今週4日、5日の値動きを見ると、両日の終値は9月25日安値=1.3462ドルや10月16日安値=1.3473ドルなどが位置する水準(図中の紫点線)をも多分に意識しているように見られます。

つまり、目下のユーロ/ドルは前述したサポートラインや日足の「雲」上限など、複数の下値支持を受けて、目先的にも下げ渋っている状況にあります。換言すると、これら複数の下値支持を今後下抜けるような展開となった場合には、ある程度まとまった下げとなる可能性があり、十分注意しておかねばならないということです。

ちなみに、目下は上から鋭角に下降してきている日足の「転換線」が「基準線」を下抜ける寸前の状況であると同時に、日足の「遅行線」が日々線を明確に下抜ける状況となっている点も注目されます。もちろん、これらは弱気シグナルの一つです。

また、重要なイベントとして欧州中央銀行(ECB)理事会が明日(7日)に予定されており、市場では追加利下げを実施する、あるいは近い将来における利下げの可能性を示唆するのではないかという憶測が広まっています。よって、ここ数日のユーロ/ドルの値動きからは目が離せないものと心得ておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役