来る日も来る日も「米民主・共和両党の協議に進展は見られず...」の繰り返しで、さすがにウンザリというのが正直なところ。米政府機関の一部閉鎖も一週間を超え、17日が期限とされる政府債務上限引き上げ問題にも解決の糸口は見出されていません。

極めて先行き不透明な状況にあって、大半の投資家は積極的にポジションを傾けることもできず、様子見姿勢を決め込む状況は今しばらく続きそうです。とはいえ、誰もが「最終的には期限ギリギリのところで何らかの妥協が成立し、米国債のデフォルトという最悪の事態は回避される」と心の奥底で考えているのでしょうし、政治的妥協成立の報が伝わった瞬間から、米株やドルにはまとまったショート・カバーが発生し、かなりの上昇を見るのではと期待していたりもするのではないでしょうか。

よく引き合いに出されるように、クリントン政権時代の米国では95年12月16日から96年1月6日まで、クリスマス休暇を挟んで21日間に渡って政府機関の一部閉鎖が実施されました。ここ数日の状況がそうであるように、当時も閉鎖実施直後には米株やドルがある程度売られる場面もありました。しかし、閉鎖期間中を通じて極端に大きく押し下げることもなく、閉鎖が解除となった後には下図(左)にも見るように大きく米株価は上昇。その一方で、ドル/円は閉鎖期間中の安値=101円台あたりの水準から98年8月にかけて147円台までの大幅上昇となりました。

時代も状況も異なるとは言え、こうした過去の事例を紐解くと、ここでいたずらに米株や日本株、ドル/円などを売り込むことは、やはり少々ためらわれます。先行きが不透明であるということは、この数日内に米政府機能が復活し、米国債のデフォルトが回避される可能性も十分にあるということなのですから。

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もちろん、ただ闇雲に楽観すればいいというわけもでもなく、実際に足下のドル/円は下支え役として期待されていた一目均衡表(日足)の「雲」下限を下抜け、それ以前に日足の「転換線」が「基準線」を下抜け。さらに、日足の「遅行線」が日々線を下抜けたことで、いわゆる「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナルが灯る事態となっています。それに加えて、以前から注目されていた6月13日安値と8月8日安値を結ぶサポートラインをも下抜けてしまっており、もはや頼みの綱は現在96.77円あたりまで上昇してきている200日移動平均線(=200日線)ばかりなりといった状況にあります。

上図(右)にも見られるとおり、ドル/円は一昨日(7日)と昨日(8日)に一時的にも200日線を割り込む場面がありましたが、両日ともに終値では200日線を上回っています。つまり、今のところは200日線を明確に割り込んでおらず、本来期待される強力な下値サポートとしての機能を果たしていると言っていい状況にあります。今後も200日線が下値をがっちりとガードし続けるならば、ようやくドル/円が「第5波」の局面に入ったとの感触を確かめる段階へ向かうことと思われます。

とにもかくにも、この200日線は非常に重要。仮に、これを明確に割り込み、8月8日安値=95.81円をも下抜けるようであれば、その後は6月13日安値=93.79円をあらためて意識せざるを得なくなるものと考えておかねばならないでしょう。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役