ようやく暖かくなってきたと思ったら、既に桜の花はほとんど散ってしまっています。もう少し遅く咲いてくれるなら、もっと暖かい日に花見が出来るものをとか、もう少し散らずにいてくれれば、そわそわした気持ちにならずにすむものをとか、そんな風に思いますが、それは桜の花に限ったことではないかも知れません。

世の中は、様々な心を静かにしておかない話に溢れています。自然の営み、経営者を初めとした様々な人の思い・行動、そして多くの醜聞。起きなければいいものを、云わなければいいものを、と思いますが、どうしようもなく起きるのでしょう。しかしそう云ったことばかりを追い掛けるのも、如何なものかとも思います。

「ことならば 咲かずやはあらぬ 桜花 見る我さへに 静心なし」(古今集・春歌下・紀貫之)・・・どうせ散ると分かっているものならば、最初から咲かないという訳にはいかないものか。桜の花は、それ自体が慌ただしいだけでなく、散るのを見ている私さえも、平静な心を失ってしまうではないか。・・・

人の世も桜の花も、なべて同じでしょうか。